賃貸経営

第7回【賃貸住宅経営の6大リスクとその回避法2 賃料下落リスクと修繕リスクの対処法】

第7回【賃貸住宅経営の6大リスクとその回避法2 賃料下落リスクと修繕リスクの対処法】

次は「賃料下落」のリスクについて考えてみましょう。

経済状況と賃料の関係

 賃料下落可能性の要因は、大きく分けて2つのパターンがあります。

 1つ目が、マクロ経済の変化です。
 景気が悪化して経済がデフレ基調の時には賃料下落圧力がかかります。逆に、経済状況がいい時には上昇圧力がかかります。民間家賃(公的な賃貸物件以外)も物価の1つですので、これは当然の流れと言えます。

 しかし、賃料には「遅効性」という性質があり、好景気になると直ちに家賃上昇ということにはなりません(下落も同じです)。
 賃貸住宅の契約は、2年、3年ごと更新というのが一般的ですので、賃料の下落上昇基調は2~3年以上の好景気・不景気が続くとみられる現象です。ちょっとした単年の景気変化では、あまり大きな変化はないということです。
 例えば、2013年以降は経済市況・不動産市況は好調ですが、賃料上昇が数字上見られるようになったのは少し後からでした。また、家賃の上昇は、一般的に都市部で始まり、その後地方へと波及していくことが多いようです。

空室率の増加と賃料下落リスク

 2つ目の要因は、空室率の増加です。
 空室が増え、また空室期間が長くなると、貸主としては、「賃料ゼロが続くよりは、家賃を下げてでも、住んでもらいたい。」という思いが芽生えます。
 サブリース契約(サブリース契約については、セキスイハイム不動産のページへ:https://www.sekifu.co.jp/owner/system.html)が結ばれている時にでも、空室が増え、それが長引くと、更新時にサブリース契約賃料の改定が行われる(賃料下落)可能性が高まります。
 周囲に空室物件が増えてくると、どこか1つの部屋が家賃を下げて入居者募集を行うと、それに呼応するように、周辺家賃相場が下がります。

 賃貸マンションが数多く存在するような場所では、入退去の期間の関係から、どこかの部屋があいていることが多いですから、募集の部屋よりも入居希望者が少ないと、需給バランスが崩れ、家賃下落の可能性が高まります。

 また、新築時に周辺相場よりもかなり高めの設定をしている時など、入居希望者が家賃の高さから敬遠してしまい、入居者あっせん会社から「空室が目立つ不人気物件」との印象を付けられてしまい、その後スムーズな入居者募集が行えないこともありますから、周辺相場を踏まえたその時点での適切な賃料設定が求められます。

経年に伴う家賃下落と収益シミュレーションでの設定

 賃貸住宅経営を始める際には、30~35年程度の収益シミュレーションが担当者から提示されると思います。これを見ながら、「どれくらいの収益があるか?どれくらいのリスクがあるか?」を検討し、最終的な賃貸住宅経営スタートの判断を行います。
 このシミュレーションの中で、経年に伴う賃料下落をどのくらい盛り込むか、は難しい判断です。
 都心などでは、築40年を超える物件でも、40年前(1970~80年台)に比べて、はるかに高い賃料が取れていますから、「経年に伴う賃料下落はほとんど関係ない」という状況です。しかし、一般的なエリアでは、築年に伴う賃料下落はあります。そのため、収益シミュレーション上では、しっかりとその下落分を見込んでおかなければなりません。賃料の想定以上の下落は、収益シミュレーションに大きな差を生みますので、注意が必要です。

 次に「修繕リスク」ついて考えてみましょう。

賃貸住宅でかかる修繕について:どんな修繕があるのか?

 賃貸住宅の経営は、途中で物件を手ばなさないとすると35年以上の長期にわたります。その間には、小さな修繕から大規模な工事まで、必ず修繕が必要になります。

 セキスイハイムの物件は比較的メンテナンスコストのかからない仕様になっています。

賃貸住宅でかかる修繕について:どんな修繕があるのか?

※上記のグラフはイニシャルコストを同額とした場合のイメージグラフです。
美観維持のため定期的な外壁洗浄をおすすめします。

 修繕関連としては、入退去時に都度発生する「原状回復」と概ね15年~20年ごとに発生する「大規模修繕」「取り換え」があります。

 原状回復は、入居者からの預かり金でまかなえる部分もありますが、経年劣化に伴う費用は貸主側負担ですので、一部はオーナー様の負担となります。主に、室内の修繕、リフォームなど、住む方が(あたかも新築時のように)快適に住む為に行うのが、「原状回復」です。代表的な例を挙げると、クロス張り替え、フロア張り替え、障子・襖・網戸張り替え、ハウスクリーニングなどです(賃貸借契約の内容により、借主or貸主が異なります)

 大規模修繕は、主に躯体にかかわる修繕工事や建物外装に関する修繕です。
塗装工事、外壁補修工事、屋上・バルコニーなどの防水の補修工事などがこれにあたります。工事費用がかなり掛かるものもあります。
 「取り換え」は、水廻り設備や給湯器、エアコン等の取り換えです。耐久年数はモノによって異なりますが、概ね15~20年くらいのモノが多いようです。

 10年を超えたあたりから、色々な個所の修繕、取り換えが必要になり始めます。15年~20年頃に取り換えモノはピークを迎えます。また、外部修繕工事は、10年目を過ぎたころから出始めます。この時期、結構な金額の修繕、取り換え費用がかかることを覚悟しなければなりません。
 しかし、ハウスメーカーが建てるようなパネル系の外装部材は、汚れが目立ちにくく、塗装もはがれにくいので、この修繕時期は遅らせることができます。10年に1度ですと、30年間では少なくとも2回の工事が必要ですので、こうした修繕時期を遅らせることは、収益率が格段に良くなります。ハイムの賃貸住宅はこうした費用を極力抑える仕様になっています。

修繕リスクとは:修繕費用を収支計画に盛り込む必要性

 このように原状回復、修繕・取り換えは必ず必要ですが、ここでいう「修繕リスク」とは、想定外の出費のイメージのことです。
 賃貸住宅経営を始める前に作成する収益計画にこれらの費用を見込んでおくことは、必須となります。もし、予算化したその費用を使わければ、その分は利益の上乗せになりますが、もしとっていないとすれば、「想定外の出費」となります。この想定外の出費こそが、リスクとなります。
 収益計画を立てるときには、これらの費用を(多少多めに)見込んでおいて、その上で収益が、自らが求める数字になっているかどうかで、賃貸住宅経営を始めるかどうかの判断をすべきです。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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