ハイム通信

賃貸住宅はどこまで進化するのか?
菜園付き賃貸住宅アンケート調査(後編)

賃貸住宅はどこまで進化するのか?菜園付き賃貸住宅アンケート調査(後編)

 「郊外でかつ駅からの距離がある遊休地に賃貸住宅を建てて賃貸住宅経営を行う」ことは、入居者の確保が難しい、あるいは高い家賃が取りにくい、といった点が指摘されてきました。しかし、例えば、都市部周辺に広がる生産緑地指定エリア等で広い農地の一部を利用することで、「菜園が付いた賃貸住宅」というコンセプトを打ち出すことで、効率のよい賃貸住宅経営が行えるかもしれません。

 では、「家庭菜園が付いた賃貸住宅」という新しいコンセプトの賃貸住宅のニーズはあるのでしょうか? 前編に引き続いて「菜園付き賃貸住宅アンケート」の分析と解説をお伝えします。

家庭菜園付き賃貸住宅はニーズがあるのか

「家庭菜園つきの賃貸住宅」は、セキスイハイムが新しく提案する賃貸住宅のため、まだピンとこない方も多いと想定して、アンケートには以下のように記載しました。

「家庭菜園つきの賃貸住宅」では、
1)お住まいの敷地内で家庭菜園ができる
2)農業に必要な道具の貸し出しがある
3)農業経験者のアドバイスを受けられる
4)農業を通じた入居者同士のコミュニティがある

というものです。単なる、菜園が敷地内(あるいは敷地のそばに)あるというだけでなく、「日々使える菜園」と「そこでのコミュニティがある」というコンセプトです。

 アンケートで、「家庭菜園つきの賃貸住宅」について興味あると回答された方は、約35%で、内訳としては、「興味を持った」が約1割、「やや興味を持った」が3割弱。となっています。
 このなかで、家族構成・年代別でみると、全年代のカップル(夫婦)、そして夫婦と子供がいるファミリー世帯の20~40代で『興味あり』が約4割と高くなっています。また、家庭菜園経験者に限ると、全体で7割弱が「興味あり」となっており、中でも、市民農園・貸し農園で行っていた方では約9割が「興味あり」と回答しており、高い関心がうかがえます。

 では、なぜ関心があるのでしょうか。

「興味あり」と回答した方のほぼ100%は、「自宅の目の前で家庭菜園ができる」ことをあげています。また、「初心者でも簡単・気軽に家庭菜園が始められる」、「まとまったスペースで家庭菜園ができる」、「道具が不要(貸してもらえる)」、「経験者のアドバイスが受けられ」の項目でも9割以上の方が「興味がある理由」としてあげています。自宅の傍で、手軽の始められる、ということが大きな要因のようです。
 また、子ども有りの世帯では、「子どもの教育・食育に良い」の項目を8割前後の方があげられています。

家庭菜園付き賃貸住宅に住んでみたいか?

 「家庭菜園付き賃貸住宅」という現在ではほとんど見られないコンセプチュアルな賃貸住宅ですが、住んでみたいと思う方はどれくらいいるのでしょうか?

 「家庭菜園つきの賃貸住宅」に興味がある方のうち、「入居したい」と「やや入居したい」で約9割。なかでも、「入居したい」と明確な回答をされた方はは約2割となっています。今回のアンケート回答者(1,000件)で換算すると、入居意向つまり「入居したい」+「やや入居したい」と回答した方はなんと3割を超えていました。この回答数の多さは、「家庭菜園付き賃貸住宅」の潜在的なニーズの高さを感じずにはいられません。

いくらくらいの賃料上乗せならOK?

 このようなコンセプトを明確に打ち出し、付帯サービスが付く賃貸住宅ですので、多少の賃料上乗せは必然となります。では、どれくらいの賃料上乗せなら、許容範囲なのでしょうか。「最大いくらまでなら入居を検討しますか」と問いました。

 アンケート結果をみると、プラス「千円~3千円未満」が約4割となって、ここがボリュームゾーンでした。入居意向が高かった夫婦と子供世帯では「千円未満」が約3割となっており、他世帯よりも家賃の増額にシビアなことがうかがえます。一方、単身世帯20~40代の層とカップル(夫婦)50~60代の層では、「3千円以上」が4割弱を占めており、こうした方々(世帯)では、「趣味にかけられるお金がある」ということがうかがえます。

まとめ:過ごし方で選ぶ賃貸住宅

 「大好きな車を眺めながら毎日を暮らす」ガレージ賃貸住宅、「隣近所を気にせずペットと暮らせる」ペット共生賃貸住宅・・など明確なコンセプトを打ち出した賃貸住宅は、郊外を中心に増えています。キーワードは「過ごし方」といえるでしょう。
 今回の調査結果を細かく見ると、野菜を作るというモノにフォーカスした興味ではなく、「家庭菜園を通じたコミュニティ」、あるいは「豊かでのんびりした家族との時間」ということにフォーカスした興味であることがわかります。

 セキスイハイムが新たに提案する「家庭菜園付き賃貸住宅」は、「菜園を通じた新たな過ごし方」に興味を持つ入居者の方と、それを見守りたい土地オーナー様を繋ぐ新メニューになるようにしたいと考えています。

 最後になりますが、アンケート調査にご協力いただいた方々に感謝いたします。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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