建替・リノベーション

賃貸住宅の築年数と家賃の下落について。リフォームは切り札になるのか?

賃貸住宅の築年数と家賃の下落について。リフォームは切り札になるのか?

なぜ、築年数の古い賃貸住宅が空室となるのか?

 街を歩いていると、賃貸住宅の駐車場フェンスなどに「賃貸、募集」と書いた看板を見かけます。一般的にハウスメーカーやアパート専業メーカーで賃貸住宅を建てると、系列の管理会社等と「サブリース契約」=(一括借り上げ契約)を行っていますので、オーナーの立場になると、保証された賃料が入ってきますから、仮に空室があっても問題ないと考える方もいるかもしれません。しかし、空室が続くようだと、サブリース契約の更新時に、以降の賃料を下げた契約になる可能性が高くなります。そのため、もし現在空室があるならば、今後空室が続かないように、管理会社としっかりと打ち合わせを行い、対応を練らなければいけません。とくに、築年数が経った物件で空室の確率が上がります。

 では、「古い賃貸住宅がなぜ空き家(空室)になるのでしょう?」という比較的シンプルな問題を考えてみましょう。キーワードは「需要の変化」です。

 理由は主に3つ考えられます。

1)需要が減少したエリアの賃貸住宅
 築年数が経つと、周辺地域の状況が変わる可能性があります。人口が増える、道路などのインフラが整うといったポジティブな変化ならばいいですが、逆に例えば行政施設や大きな工場等が移転したというネガティブな事が起こると需要減少可能性が高くなります。賃貸住宅経営を始める前には予期しにくいことも起こりえます。

2)賃料が適正でない賃貸住宅
 経年により賃料の減少に対する対応をどうするか、は悩ましい問題です。築年数が経っているのに、高い家賃のままですと周辺の築浅物件に比べて競争力がありません。しかし、「ここまでは下げたくない」という思いもあります。こうした際に、リフォームをするなどと努力すればこうした状況は改善されます。

民間賃貸住宅における建築時期における家賃をみると、明らかに、築年数に応じてなだらかな賃料の下落があります。(都市の一等地等は除く)

3)設備、仕様が市場や周辺状況に比べ劣っている
 住宅の設備・仕様は年々進化しています。水廻り設備、給湯器、エアコン等、メーカーはどんどん新しいモデルを開発して、かつては珍しかった仕様がいまでは「当たり前」の仕様になっていることも珍しくありません。
 賃貸住宅においては、建物(外観)の古さは感じなくても、設備・内装仕様・その他中に入ると、「古さを感じる」物件が増えます。

4)現行耐震基準に合っていない
 また、建物そのものでいえば、地震の発生確率の高いと言われているエリアはもちろんですが、全国的に旧耐震物件は敬遠される傾向にあります。

リフォームは空室対策の切り札になるのか

 空室の原因1~4のうち、3、4は本連載に関することですが、今回は3について述べます。
 賃貸住宅は、オーナー自らが住んでいる例は多くありませんので、お金のかかるリフォームを積極的に行うオーナーは少ないようです。なんとか、現状のまま、あるいは少し手直しを施す程度で抑えたいと思っている方が多いようです。

 賃貸住宅を探す方は、ずいぶん前からPCやスマホを使いネット検索で候補の部屋を探します。検索の際の条件検索には年数もあり、昨今1つの目安は、20年以下(つまり2000年以降)となっているようです。しかし、条件を緩和して候補物件を増やす際には、「リフォーム済み」かどうかが大きな決め手となります。「確かに築年数は古いけれど、リフォームされているのなら、物件見学に行ってみようか」となるわけです。
 その際にインパクトがあるのが、水廻り設備の取り換え、エアコンの取り換えなど、3に書いたような古い設備を入れ替えかえているか、だと思います。
 いうまでもありませんが、見学数が増えないと、空室物件の入居者は増えません。こうして考えると、「リフォームは空室対策の切り札になる」とは言い切れませんが、「空室が減る可能性が上がる」とはいえると思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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