建替・リノベーション

賃貸住宅建て替えの決断と立ち退きについて

賃貸住宅建て替えの決断と立ち退きについて

 一般的に賃貸住宅経営の建て替えを検討し始めるのは、築30年を過ぎたあたりからでしょう。
 建て替えを検討するきっかけとなるのは、一言で言うと「賃貸住宅として競争力がなくなってきた」ということです。具体的には、周辺に新しい賃貸住宅が増えたこと等により、1)空室が増え始めた 2)賃料下落を余儀なくされた等が要因となります。
 しかし、建て替えに踏み切るためには、まず、1)ローン残債や資金の状況がポイントとなります。いうまでもありませんが、残債がある場合は、建て替えをするには難しくなります。また、その場所において 2)賃貸住宅需要がこの先も見込まれることも重要な視点となります。

立ち退きという最初のハードル

 建て替えにおいて、最初のハードルとなるのは、現在入居されている方々の「立ち退き」をどうするかです。
 建築後初期は満室やそれに近い状態で推移しますが築25年を超えてくると、競争力が落ちて90%~80%稼働という状況になり始めます。(もちろん、エリア格差があります。エリアによっては、築35年を超えても満室稼働ということも珍しくありません。)
 80%の稼働ということは、10室の賃貸住宅ですと、8室には入居者の方がいるという事で、このタイミングで建て替えを検討し立ち退き交渉を行うのは、それなりに費用と時間のかかるハードワークになります。そのため、入居率が50%以下で検討するほうが楽と言えます。

普通賃貸借契約と定期借家契約

 一般的に、オーナーと入居者の方が結ぶ賃貸借契約は、「普通賃貸借契約」で、これは貸す側が、一方的に「契約更新しない」ということができない契約形式です。つまり、入居者の方は、いつまでも住むことができるという入居者の権利を守る契約形態と言えます。賃貸借契約には、他に「定期借家契約」という形式があり、これは期間の定めがあって、基本的には更新できない賃貸借契約です(オーナーサイドがOKを出せば再契約できます)。
 いうまでもありませんが建て替えを検討する際には、入居者の方に退去(立ち退き)をしてもらわないといけません。そのため、期間の定めのない「普通賃貸借契約」の場合、入居者の方に「立ち退き料」の支払いと「正当事由」を伝える、という2つのことを行わないと認められません。こうしたことを行うことが、「立ち退き交渉」と呼ばれるものです。この立ち退き交渉は、オーナー本人が行うか、弁護士が行うことと定められています。もちろん、弁護士に依頼すると、費用がかかります。

立ち退き料と誠意について

立ち退き料は、ケースバイケースですが、一般的な相場とされているのは、家賃の6カ月分と言われていますが、それに引っ越し代を上乗せするなどという「誠意」分の上乗せをすることもあるようです。
 立ち退き交渉は、すんなりといくこともありますが、「どうしても住み続けたい」という入居者の方がいれば、長引くことになります。じっくりと話し合って、また立ち退きまでの期間をある程度長くとって、そして立ち退き料を支払うことで、納得してもらう必要があります。
弁護士の方にお話を聞くと、なかなか応じていただけないのは、ご年配の方が多いようですが、高齢になって住まいを変えるのは苦労も多いと思いますので、仕方ありません。裁判等になると、貸し手側が不利になることも多いようですし、また長期化することもあるようですので、とにかく誠意を持って対処するしかないでしょう。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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