不動産市況

2021年の賃貸住宅・土地活用市況の見通し

2021年の賃貸住宅・土地活用市況の見通し

 新型コロナウィルスの影響で世界中が揺れた2020年が過ぎ、新しい年が始まりました。
今回の連載では、2020年を振り返りつつ、2021年の賃貸住宅・土地活用市況の見通しについてお伝えします。

2020年の賃貸住宅投資・土地活用市況の振り返り

 2020年の貸家新設住宅着工戸数は、新型コロナウィルスの影響が出始めた2~4月ごろから全国的に多く落ち込みました。その後は、一部地域では回復基調にありましたが、地方都市を中心に回復が遅れています。全国合計では1~10月全ての月で前年同月比マイナスになりました。そのため、全国年間合計では10~15%程度のマイナスになりそうな見込みです。(執筆時:12月23日。住宅着工戸数は10月分までの公表ですので、11月12月分の予想を加味しています。)
 このような中で東京の貸家新設住宅着工戸数は、対前年同月比で1月は16.8%のプラス。2月から4月まではマイナスが続きましたが、5月は 20.3%のプラス、6月は6.8%のプラス、7月は5.3%のプラス、8月は18.3%のプラス、9月と10月はそれぞ れ-6.1%、-12.7%と落ち込んでいるものの、全体的に見ると、比較的堅調だったといってもいいでしょう。 新型コロナウィルスの影響があったにもかかわらず、東京の貸家着工戸数は、1~10月の合計数字で前年を超えています。
 また、大阪では、4月以降、大きなマイナスの月もありますが、その分を吸収するように6月はプラス46.1%、10月17.5%となっており、グラフにするとギザギザの形になっています。また、愛知や福岡は1~10月で大きく落としています。

賃貸住宅投資・土地活用市況に大きな影響を与える金利の見通し

 現状から鑑みて、新型コロナウィルスによる経済の混乱は、WITHコロナが定着してもしばらくは続きそうです。こうした経済状況を打破するために、各国は超低金利政策を行っています。
 不動産市況に大きな影響を与える金利ですが、日銀の低金利政策に加え、先進各国の中央銀行の動向から考えると、低金利はしばらく(おそらく数年単位で)続きそうです。また、昨今の世界的な国債の大量発行など論理的に考えると、長期的にみれば金利上昇、インフレは避けられそうにありません。こう考えると、低金利の間に賃貸住宅を建てるなどの仕掛けを行い、賃料収入がある不動産資産を持つという事は有意義といえます。

なぜ、東京の賃貸住宅投資だけは堅調だったのか

 前節で述べたように東京が比較的堅調だったのは、投資マンション市況において新型コロナウィルスの影響があまり見られなかったことが要因だと思われます。サラリーマン大家さんのような方々は、「もう少し落ち着いてから」というマインドも見られ、やや落ち込んだようですが、逆に、富裕層が購入するような1棟モノのレジ物件は、昨今の株式市場が好調と同じように、好調を維持しています。国内投資家に加え、海外投資家(主にアジア圏)も積極的に「買い」に走っているようです。こうした方々が建築主となっている物件、あるいはこうした方々への販売用物件としての建築数が増えたことが東京での貸家着工数が堅調だった要因と思われます。

2021年の賃貸住宅投資・土地活用市況はどうなる?

 このような大都市部における賃貸住宅投資が堅調な傾向は2021年以降もしばらく続くと思われます。不動産投資家のアンケートを見ても賃貸住宅物件への投資意欲は旺盛です。また金融機関の融資姿勢も、リーマンショックの時のような引き締めの兆候は見られません。
 その他の都市での賃貸住宅投資は、主にいわゆる「土地活用での賃貸住宅建築」が中心ですが、この領域は2020年の反動増が見られるでしょう。
 こうしたことから、全国的に見れば、2021年の貸家新設住宅着工戸数は回復し、2019年レベルに戻るでしょう。

 ちなみに、2021年の居住用不動産(注文建築・分譲マンション・分譲戸建て)の動きですが、この領域においても2020年は大きく落としましたので、その反動で注文建築の着工戸数は増加、新築物件の発売戸数増加となり、中古物件では売買が活発になりそうです。言うまでもありませんが、住居の需要はどんな時も収まることはなく、「停滞していると需要が溜まる」という現象が起こります。つまり2021年は反動増が起こる可能性が髙い、と予想されます。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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