不動産市況

最新の人口移動の状況分析② 名古屋圏と大阪圏の状況

最新の人口移動の状況分析② 名古屋圏と大阪圏の状況

 最新21年の「人口移動報告」で見る人の移動と住む場所の変化。前回は、関東を中心にお伝えしましたが、2回目は名古屋圏と大阪圏についてです。
 出所は全て総務省統計局、2022年1月発表の「住民基本台帳人口移動報告」より。また、数字には外国人も含みます。

名古屋圏の状況

 この調査で定義されている「名古屋圏」は愛知県、岐阜県、三重県となっています。名古屋圏全体では10,914人の転出超過となりました。これは前年に比べて6,473人の減少となっています。
 名古屋圏では、それまでは1000人未満の転出超過でしたが、2017年頃から急に転出超過の数が増え始めていました。2019年と新型コロナウイルスの影響が広まった20年を比べてみると、確かに20年の方が転出超過ですが、増加率は大きくありませんでした。新型コロナウイルスの影響がというよりも名古屋圏全体の様子が垣間見れます。

 各県別に見ると、愛知県は転入数が前年に比べて3,041人(+2.6%)増え、また転出数は1,508人減りましたが、それでも20年に引き続き2,747人の転出超過となりました。日本の主要4大都市と言われる中では、東京・大阪・福岡は転入超過ですので、4大都市唯一の転出超過県となっています。愛知県は2020年の転入者が大きく減少しました。新型コロナウイルスの影響で、製造業などで働く県外労働者や海外労働者の流入が大きく減少した為だと推測されます。20年からは多少回復しましたが、回復にはもう少し時間が掛かりそうです。
 岐阜県においては、人口移動に関しては新型コロナウイルスの影響はあまり感じられず、近年毎年5,000~7,000人台の転出超過が続いています。
 三重県も同様に、影響は見られず毎年多少波がありますが、平均すれば3,000~4,000人台の転出超過が続いています。

 進学、就職を機に移動する方の大半は、新しい地での住居は賃貸住宅です。2020年は大学近隣の賃貸住宅に空室が目立ちましたが、幾分回復の兆しが見えてきたようです。

大阪圏の状況

 この統計による大阪圏は、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県となっています。大阪や京都と結びつきの強い滋賀県は、何故か大阪圏に入っていません。
 大阪圏全体では4,912人の転出超過となりました。20年は118人とほんの僅かに転出超過でしたが、21年は転出超過数が増えました。
 大阪府は、21年は5,622人の転入超過で昨年よりも7,734人減りましたが、大阪府においては、2015年以降転入超過が続いています。1990年代後半から20104年までの転出超過が続いたのは、大手企業等が、2000年代に入り実質的な本社機能を大阪府からの東京に移すことが続いたことが要因だと考えられます。それが一服したこともあり2015年以降は転入超過が続いていました。また、2015年以降は大阪にインバウンド観光客が多く訪れるようになり、そこに大きな雇用が生まれたこと一因だと思われます。現在はまだ、外国人観光客はほぼ皆無ですが、おそらく年内にはインバウンド需要は回復すると思われますので、期待が持てそうです。

 兵庫県では、21年は5,344人の転出超過、ここ5年くらいは5~6,000人程度で推移していますが、以前は7,000人を超える年も多く見られました。
 京都府では、3,874人の転出超過、20年・21年は大きく転出超過になっています。こちらもインバウンド需要次第で回復すると思われます。
奈良県では、1,316人の転出超過、21年は転出超過が大きく減りました。

まとめ

 名古屋圏・大阪圏の現状を見ると、愛知・大阪・京都においては、製造業の影響、インバウンド需要の影響など、新型コロナウイルスの影響により人口移動に変化が見られました。しかし、名古屋圏や大阪圏では、首都圏や首都圏周辺の県で起こっているような、一定規模でのファミリー層が周辺地域への移動は、数字上ははっきりとは見られませんでした。
 報道などでは、取り上げられることが多い、リモートワークの浸透による、郊外への移住ですが、人口移動の数字だけみれば、これは関東地域に局所的に起こっている現象だと言えそうです。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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