企業・法人の賃貸運用
CRE戦略の具体的なアクション
具体的なアクション事例
ここからは、具体的なアクションを見てみましょう。
不動産を所有する企業が行う、主なアクションは以下のA〜Eの5つです。
第2回で述べたように、企業の現状をあらゆる角度から分析を行い、今後「使う」「使わない」を精査することがスタートとなります。
そして、「使わない」の選択肢を選んだ時、「手放す」ならば、下記Eのことを考えます。また、「他の用途として使う」となれば、建物があってそれを活かすとすればCのコンバージョン、また更地(=遊休地)ならばAの遊休地活用となります。
そして、CRE戦略を考えたときに、さらに「不動産を購入する」という選択肢=Dということも考えられます。
以下順に説明します。
A )遊休地活用
現在使っていない土地を遊ばせておくのは勿体ないと判断し、そこに賃貸物件を建築して賃料収入を得る活動を行う。また、今後の展開を見越して、工場・倉庫の移転などを行い、空いた土地に賃貸物件を建てる等の事例です。
バス会社が比較的都市部にあったバス車庫を郊外に移転し、そこに賃貸住宅を建てた事例や、鉄道会社が駅近くの空いたスペースに賃貸住宅を建てて、駅隣接の大人気物件を建てた事例などがあります。
企業が郊外に所有する自社オフィスの駐車場スペースが、利用数の割に広すぎるということで、その一部に賃貸住宅を建てて自社社員だけでなく、広く入居者を集めていると打った事例や使わなくなった倉庫を取り壊して、賃貸住宅を建てて賃料収入を得ている企業等、事例はたくさんあります。
企業の遊休地活用事例は、以前は都市部でも見られましたが、東京や大阪、名古屋といった大都市部では、企業が持つ遊休地はすでに売却や何らかの活用をしている事例が多く、遊休地そのものが少なくなっています。そのため、昨今では地方都市で多く見られる事例となっています。
B )低利用地活用
都市部で多くみられる事例です。自社ビルを建て替える際に、未消化の容積率があることを利用し、自社で使うスペース以外は、賃貸オフィスとして貸している事例は多くあります。
かつて建て替えで大きなニュースとなった東京中央郵便局ですが、東京以外にも名古屋、博多駅前の中央郵便局が建てかえられ、KITTEというビルになっています。これらはかつて低層ビルでしたが、いまでは、高層ビルに生まれ変わって高度利用されています。
C )建替え・コンバージョン
コンバージョンとは、リノベーションを行って用途変更などをすることです。例えば、使わなく社宅をリニューアルして、賃貸住宅にする。また、ホテルを賃貸住宅に用途変更する、といった事例があります。
D )新規購入
企業規模拡大に伴い、新たにオフィスビルを購入、工場の新設・・、最もポピュラーなパターンです。
また、事業外の収入として賃料収入を得るために、土地を買って賃貸住宅を建てるという事例も最近は多く見られます。
E )売却
最後は、使わなくなった遊休地、未利用地の売却です。企業業績悪化というネガティブな場面でも起こりますが、所有する不動産の見直しによる、取捨選択を行い、より効率的に事業を行う一貫としてのアクションという事例も多く見られます。
不動産は保有する資産としては最大級のもの、という企業が多いと思います。そのため、自社が保有する様々な不動産を上手く活用できるかは企業業績に影響が大きいため、しっかりとした分析に基づいたアクションを行うことが求められます。