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CRE戦略を経営の視点から考える

CRE戦略を経営の視点から考える

 第1回目でCRE戦略を考える時には、不動産の視点だけでなく、財務の視点や経営の視点から考える必要があると述べました。

ここからは、「CRE戦略における経営の視点とは何か?」について考えます。主に以下の4つの観点からアプローチするのが一般的です。

① 企業業績
いうまでもありませんが企業業績がよくないときには、積極的な投資はできません。逆に企業業績が良い時は、利益余剰金の一部を不動産への投資にあてることを検討してもいいでしょう。

② 事業の成長ライフサイクル

③ 変化に伴うフレキシブルさの度合い
i)社風  ii)事業内容  iii)設備投資の大きさ

④ 今後の事業展開における必要不動産の在り方

 ここではこれらの中でも分かりやすい「② 事業の成長ライフサイクル」について、簡単にお伝えします。

 企業の成長サイクルは下の図表のように、大まかに4つのフェーズがあります。
「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」です。

 今は華やかなビジネスでも、数十年経つとそのビジネスはすっかり色あせ、業界の上位企業のみが大きな収益を上げて、多くの同業他社は厳しい状況に置かれてしまう、といったことはよくあることです。
 ビジネスはどんどん進化・変化していきます。かつては、成長~成熟期と呼ばれる期間が20~30年間はありましたが、様々な情報が容易に入手できる昨今では、その期間は10~15年に半減しているともいわれています。

 図のように、どんな産業にもライフサイクルがあります。
大抵の場合、企業はその業界が「導入期」や「成長期」と呼ばれる頃に、創業されます。追い風が吹いて売り上げが伸びて、企業の収益も好調になります。人材を増やし、積極的に投資を行います。現在はキャッシュを生んでいる事業であっても、例えば現在「成熟期」にあるとするならば、近い将来的には、「衰退期」に入って売り上げが減少してしまう可能性も高くなります。反対に、「導入期」にある場合は、今後規模が拡大していくことが予想出来るため工場用地や倉庫、また、人材が増えるのでオフィスの広さについても将来を見据えて考えていく必要があります。
 同時期に参入する企業が多くなるために、だんだんと競争が激しくなり、収益の上昇カーブが鈍化してきます。そして、それが続くと耐えられない企業が出始め、企業統合や事業の廃止などが行われ、産業は収斂されていきます。成熟期辺りに、何らかの賃料収入があれば下支えとなり、仮にその産業が衰退期に入っても、新たな産業にかけることが可能になります。

 東京の銀座周辺では、老舗と呼ばれる企業がビルを所有し、その1階で昔ながらのビジネスを営んでいますが、おそらく本業よりも、ビルの賃料収入の方が多いと思われます。
 このように、賃料収入があれば、永続企業への足掛かりになるわけです。この時の不動産は、何もビルに限ったことはなく、賃貸住宅でもいいわけです。企業が賃料収入がある不動産を持っていることは、こうした時に役に立ちます。

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