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民法改正から早3年!賃貸借契約で、これだけは知っておきたいこと

民法改正から早3年!賃貸借契約で、これだけは知っておきたいこと

 賃貸住宅経営において管理は、日々のことですから重要でありますが、本業がある方にとっては面倒なことも多いようです。そのため管理会社等に任せる方も多いようです。しかし、リタイアされ時間に余裕のある方にとっては、新たな自主的に行える仕事として楽しくこなす方もいらっしゃいます。管理会社に委託している物件も自主管理の物件も、ともに入居者付けは、主に賃貸斡旋会社に依頼することになりますが、いずれにせよ「入居者の方との賃貸借契約」を結んで初めて賃貸住宅経営がスタートします。ここでは、賃貸住宅経営における「賃貸借契約」について解説します。また、2020年には民法が改正され、賃貸借に関する点も改正が加えられましたので、その点も合わせて解説したいと思います。

自主管理か?委託管理か?

 賃貸住宅を建築して賃貸住宅経営を行うと、「建物の管理」とともに「入居者とのやり取り=管理」を行う必要があります。
 建物の管理には、日々の清掃業務や設備の維持メンテナンス業務、点検などがあります。
 これらに加えて、入居者管理業務があります。家賃等の出納や入居者トラブルの対応、入退去管理(入居者斡旋、入居立ち会い、退去立ち会い、保全管理)など、入居者管理業務は多岐にわたります。
 これらをオーナー自ら行っている賃貸住宅は、「自主管理」物件と呼ばれます。そしてこれらを、管理会社に委託する物件は、「管理委託」物件と呼びます。 委託すれば、当然費用がかかりますが、賃貸住宅経営は大幅に楽になります。リタイアされた方など時間にゆとりがあれば、自ら行ってもいいかもしれませんが、管理会社に一任する方が一般的だと思います。

賃貸住宅における賃貸借契約

 物件の管理や入居者募集を不動産管理会社に任せていたとしても、一般的な管理の委託のみ外注する場合は、賃貸借契約を結ぶ当事者は物件のオーナー(貸主)と貸借人(借主)です。
 一方、サブリース契約を管理会社等(=サブリース会社)と結んでいる場合は、管理業務に加えて、一括借り上げ契約(サブリース契約)を行います。サブリース契約を結べば、管理委託費に保証料が上乗せされますが、契約期間内は空室が出ても賃料が下落しても、契約したお金が振り込まれます。サブリース契約の場合、オーナーは管理会社と契約を結び(マスターリース契約)、管理会社が賃借人(=入居者)の間で、転貸借契約(=サブリース契約)を結びます。そのため契約業務が一本化され、手間が減ります。

定期賃貸借契約か普通賃貸借契約か

 賃貸借契約の契約内容は、貸主と借主によって基本的には自由に定めることが可能ですが、必ず押さえておきたいポイントは、賃料、敷金・礼金といった金銭に関わる事、そして期間、更新、など期日に関すること、そしてペット可かどうか、楽器使用可かどうかといった特記事項と呼ばれることです。

 また、賃貸借契約が更新される普通賃貸借契約か、更新がなく期間の定めのある定期賃貸借契約かも事前に決めておく必要があります。定期賃貸借契約は、このところ分譲マンションの賃貸物件なので目立つようになってきました。いわゆる土地活用として建築されたアパート物件では定期賃貸借契約はほとんど見かけませんが、建て替えを予定している物件やリフォーム工事などを控えている物件では、定期賃貸借契約を行うこともあります。

2020年4月からの改正について

 明治時代に制定されこれまでほとんど改正されてこなかった民法が2020年4月から改正されました。その中で賃貸借に関する改正が行われ、またこれまで明文化されていなかったことが改正内容に盛り込まれました(改正前、2020年4月以前の契約には、改正前の民法が適用されます)。今回の改正でおさえておきたい事をいくつか解説します。

1)賃借物の修繕に関する要件の見直し
 借りている建物や設備に不具合があって使えない場合など、賃借物の修繕が必要な場合でも、賃借物はあくまで賃貸人のものですから、賃借人が勝手に手を加えることはできません。しかし、実際に賃借物を使っているのは賃借人ですから、賃貸人が修繕してくれない場合でも賃借人は一切自分で修繕することができないとすると、不便です。改正前の民法には、どのような場合に賃借人が自分で修繕をすることができるのかを定めた規定はありませんでした。
改正後の民法では、
① 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、又は賃貸人がその旨を知ったのに、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
又は
② 急迫の事情があるとき
には、賃借人が目的物を修繕することができることとされました。
これにより、上記①や②の場合には、賃借人が目的物を修繕したとしても、 賃貸人から責任を追及されることはないことが明確になりました。

2)賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化
 賃貸借契約が終了した場合には、賃借人は、賃借物を原状(元の状態)に戻して賃貸人に返還しなければならないとされています。また、この原状回復義務の範囲について、一般に、通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)及び経年変化はその対象に含まれていないとされています。しかし、これらのルールは改正前の民法の文言上は明確ではありませんでした。改正後の民法では、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこと、しかし、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないことを明記しました。
(ここまで、法務省「賃貸借契約に関するルールの見直し」より引用)

 この条項は、これまで一般的なルールでしたが、民法に明記されました。

 民法改正から3年が経過しました。改正後の契約が増えてきているものと思われます。賃貸借契約の知識は、賃貸住宅経営には必須ですので、ぜひとも理解しておきたいものです。

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