建替・リノベーション

空室賃貸住宅のリフォームをどう考えるか?

空室賃貸住宅のリフォームをどう考えるか?

賃貸住宅の空き家とは?

 空き家に関する調査データは、よくメディアでも取り上げられる「住宅・土地統計調査(総務省統計局が主体:最新は2018年調査データ=2019年公表)」があります。
 ここでいう空き家とは、「普段人が居住していない住宅」を指しますが、これらは4つに分類されます。①二次的住宅・別荘的住宅 ②借家用 ③販売用 ④その他 の4つとなります。

 これらは、以下のように定義されています。(引用:上記調査資料)

①二次的住宅・別荘用
残業で遅くなったときに寝泊まりするなどたまに使用する住宅を「二次的住宅」といい、週末や休暇に避暑・避寒・保養などの目的で利用する住宅を「別荘」という。

②貸家用
新築・中古を問わず、貸すことを目的に所有している住宅をいう。なお、貸別荘もここに含める。

③売却用
新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅をいう。

④その他
例えば、所有者が現在、老人ホームなどの施設に入居していて誰も住んでいない自宅や、使用目的がなく、現在、空き家として所有している住宅などをいう。

 この定義によると、社会問題とされている、いわゆる「空き家」は④「その他」に分類されます。③の売却用は、販売中の住宅です。

 そして賃貸住宅の空室は②の貸家用のカテゴリ―に分類されています。
 この賃貸住宅の空き家の大半は入居者募集中の物件だと思いますが、それ以外にも「今後建て替えの予定がある」「今後リフォームする予定がある」などの理由で、「募集停止中」の物件も多く含まれていると思われます。つまり、意識的に空き家にしている家(部屋)があるということです。

賃貸住宅の空き家を所有する方の意向~空き家所有者実態調査~

 ここまで述べた「住宅・土地統計調査」の空き家の調査は、空き家に関する基本的な項目(所在地、建て方、取得方法、建築の時期、居住世帯のない期間)などです。

 国土交通省では、さらに深掘りした「空き家所有者実態調査」というものを行っており、これは「全国の空き家について利用状況、管理状況、所有者の意識・意向等を把握すること」を目的としています。この調査は、5年に1度総務省が実施している前述の「住宅・土地統計調査」において「居住世帯のない住宅(空き家)を所有している」と回答した方々の中から、全国で約1万4千世帯を無作為に抽出した世帯を調査の対象とし、様々な「所有者の意向」を質問しています。この「空き家所有者実態調査」の最新結果が20年12月半ばに発表されました。

 この中にある、空き家(空室)になっている貸家(賃貸用住宅)を所有している方々への調査の中からリフォームに関する結果を見てみましょう。

空室の賃貸住宅のリフォーム状況と今後の意向

 「建て方別の最近5年間のリフォーム工事の状況」の結果をみると、全体では約18%の空き家物件で5年以内にリフォームが行われています。しかし、これを共同住宅(アパート・マンション)に限ってみれば、約24%と大きく上昇します。他の建て方に比べてダントツの多さとなっています。もちろん、マンションの中には販売中の空き家も含まれていると思いますが、リフォーム工事を行った物件の多くは、賃貸用住宅だと推測できます。それは、この後の別の結果にあるのですが、アパートなどに多い鉄骨造の方が、主に10階建て以上の大型マンションで使われる鉄筋コンクリート造に比べてリフォーム工事を行っている割合が多いことから推測できます。
 次に、「建て方別の今後のリフォーム工事の実施意向」の結果をみると、全体では10%の方が「今後リフォームを考えている」と答えていますが、これを共同住宅(アパート・マンション)に限ると2倍以上の約21%の方がリフォームを考えているようです。

賃貸住宅の空室をどうするか

 賃貸住宅の空室は築年数が一定年経過した物件で多く見られます。「ここまでは上手くいっていた賃貸住宅経営ですが、空室が続くと収支計画が崩れ始める」という可能性が高まります。また、空室が長く続くと、「安い賃料でも入ってもらいたい」という心理から、「安い賃料で貸す」ことが増え、長期的に収益構造が崩れます。こうした際の解決策として一つとして、単に「賃料を下げる」という選択肢だけでなく、少し費用はかかりますが、「リフォーム工事を行い、賃料を維持する」という選択肢も検討の価値があると思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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