建替・リノベーション

400万戸に迫る賃貸住宅の旧耐震物件。どう対処すべきか?

400万戸に迫る賃貸住宅の旧耐震物件。どう対処すべきか?

 土地活用・遊休資産活用として、賃貸住宅を建築し賃貸住宅経営を始める方が増えたのは、1970年代に入ってからです。そして80年代~90年代前半には多くの賃貸住宅が建てられました。70年代~80年代前半の賃貸住宅は築40年を超え、一般的には競争力が低下し空室が目立ち始め、賃料も値下がり基調に入ります。そうなると、「そろそろ建て替えするかどうか」の検討を始める必要があります。

400万戸近い旧耐震賃貸住宅

 旧耐震基準下(1981年以前)で建てられた賃貸住宅を所有されている方、特に築40年を超える物件を所有する方は、「旧耐震賃貸物件をどうするか?」の選択を検討し始めているものと思われます。「築年が進み、入居者が付きづらい」という悩みに加え、「旧耐震物件のため耐震性は大丈夫か」と入居を敬遠される方も増え、競争力が低下していきます。

 1981年以前の旧耐震賃貸物件は約386万戸、それよりも前の基準である旧耐震賃貸物件は、約137万戸あるとされています(平成30年(2018年)住宅・土地統計調査)。近いうちに起こると言われている、首都直下型地震、あるいは南海トラフ巨大地震のことを想定すると、「いつ来てもおかしくない」という報道ですので、できるだけ早めの対応がいいのかもしれません。

 1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、等の大規模災害が起こり、住宅の耐震化についての議論が盛んに行われるようになりました。居住用の一戸建て、特に木造住宅において、そのリスクの高さが指摘され、行政が補助金を出すなどして、耐震化を促しています。そして、その流れは、共同住宅タイプの賃貸住宅にまで及んでいます。

3つの選択肢

 旧耐震賃貸物件をどうするかは、主に以下の3つが考えられます。

 1)建て替える 2)耐震補強工事を行う 3)取り壊す となります。

「取り壊す」という選択肢は、現在も空室が目立ち、該当地域の今後の賃貸住宅需要の伸びが期待できない時には取るべきです。
 周辺の賃貸住宅需要が見込めれば、「建替え」の選択肢を選べばいいと思います。

旧耐震賃貸住宅を建て替えてもいいと思われるパターン

 1) 既存物件の残債が少ない(あるいは、ない)

 2) 賃貸住宅需要がこれからも旺盛であると予測される立地

 3) 融資に問題ない

 これら3つを満たすことができれば、賃貸住宅の建て替えを検討してもいいと思われます。
 賃貸物件の残債もなく(あるいは、少なく)、またこれからも賃貸住宅需要が旺盛だと思われるエリアの旧耐震賃貸物件は、一般的には建て替えるのが最もよいと思われます(オーナー様の置かれている環境(例えば、年齢や相続に関すること)にもよりますので、一概には言えませんが)。
 建て替えには、相応の費用の投資が必要ですが、金融機関からの融資がスムーズに行うことができれば、また今後も賃貸住宅経営からの収益が上がり、さらには税などのメリットが享受できます。

建て替えるメリット

 賃貸住宅を建て替えるメリットとしては、

1)入居者が付きやすい

2)賃料が上がる可能性が高い

3)減価償却費がとれ、税のメリットを得やすい

 等があります。

建て替えの費用

 賃貸住宅経営では多くの方が金融機関からの借り入れを行って行いますのでリスクがつきものですが、それを超えるようなメリットがあると判断すれば、建て替えるのがいいと思います。しかし、言うまでもありませんが、賃貸住宅経営を始めた40~50年くらい前に比べて、現在の建設費はずいぶん高くなっています。

 建て替えて、賃貸住宅が新築になると、一般的に賃料は高くなりますので、収益シミュレーションをきちんと立てて、最終的な判断を行ってください。

入居者の一時退去

 建て替えの際に注意しなければならないこと、少々面倒なことが、現在の入居者の方の一時退去の問題です。
 建て替えると決めると、現在の入居者の方には、退去してもらわないといけません。借地借家法があり、一方的には行えません。建て替えを決断し、その後順次更新の際に定期借家契約に切り替えて、すべての方の退去が終わって初めて取り壊し~新築建設という流れが一般的です。時には、専門家である弁護士等と相談をして、適切な対応が求められます。
 一般的に定期借家契約は、普通借家契約に比べて、家賃は低くなりますので、既存物件における収益シミュレーションが少し悪化することも忘れないでいただきたいと思います。

 賃貸住宅の建て替えを検討しはじめたら、セキスイハイムをはじめ、賃貸住宅経営に詳しい専門家に一度相談するといいと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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