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いまさら聞けないZEHとは? ~シリーズZEH賃貸住宅①~

いまさら聞けないZEHとは? ~シリーズZEH賃貸住宅①~

 2020年ごろから「ZEH」という言葉がジワジワと浸透してきました。
 本稿では、ZEHの概要を「これだけは知っておきたい」ことに絞って解説したいと思います。

ZEHの定義

 ZEHとは、(NET ZERO ENERGY HOUSE:ネットゼロエネルギーハウス)のことで、国土交通省の定義では、「外皮(=外装)の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」としています。
また、経済産業省の定義では、「快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」とされています。つまり、「省エネルギー性能」と「創エネルギー性能」を兼ね備えた住宅ということになります。

政策的な背景

 カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味します。我が国は、世界的に脱炭素社会を目指す動きの中で、2050年にカーボンニュートラル(つまり差し引きしてゼロ)、2030年度には温室効果ガス46%(2013年度比)削減、を目標に掲げ、その実現に向けて様々な取り組みが進んでいます。当時の菅総理が2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」を行ったことで、このワードが一気に広まりました。
 こうした動きに呼応する形で、エネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策を加速させる取り組み、ネットゼロエネルギー建物の建築推進を、国土交通省、経済産業省、環境省の3省が一丸となり進めています。
 具体的には、一般住宅では前述のZEH、集合住宅ではZEH-M(後述)、ビルではZEB(ネットゼロエネルギービルディング)の建築の推進です。
 それに呼応する形で、住宅系ではハウスメーカーを中心に、ビルではゼネコン等が中心となり、ネットゼロエネルギー建物を推進するようになっています。

消費者の意識の変化

 ご承知のとおり、22年年始頃から物価上昇が顕著になってきました。とくに、ガソリン代、電気代、ガス代などエネルギー関連費用の価格上昇は、円安、ウクライナ情勢、その他多くの要因が相まって、しばらく続きそうな様相です。
 直近22年9月の消費者物価指数を見れば、電気代は前年同月比で21.5%の上昇、ガス代は19.4%の上昇(都市ガスに限れば、25.5%の上昇)、など上昇幅が大きくなっています。
 また、室内でのエネルギーに関するモノの値段では、ルームエアコン価格は、前年同月比で14.4%の上昇となっています。
 このような物価上昇が、国民の「省エネ」意識を高めているものと思われます。

省エネ基準適合住宅

 建物省エネ法に基づき、その基準をクリアした住宅は「省エネ基準適合住宅」と呼ばれます。ZEHは省エネ+創エネをクリアした住宅ですが、ZEHの省エネ基準については、この「建築物省エネ法」とは若干異なりますが、概要は概ね似通っています。
 国土交通省によれば、令和元年(2019年)に建てられた住宅のうち、全体の81%が省エネ基準適合住宅でした。平成27年(2015年)に建てられた住宅では46%でしたので、大幅に増えたことになります。これを規模別でみれば、小規模(300㎡未満)は令和元年には87%で、中規模(300~2000㎡未満)では75%、大規模(2000㎡以上)では68%となっています。
 いずれも年々増加していますが、大きな住宅(大規模集合住宅)の方が、個人の住宅に比べて、やや割合が少ないようです。

ZEH-M:ZEHマンションとは

 住宅と一口にいっても、主に個人住宅である戸建住宅から、賃貸住宅、賃貸アパート、大規模分譲マンションまで、その種類とサイズは様々です。

 ZEHの中でも、とくに集合住宅についてはZEH-Mと呼ばれています。
 ZEH-Mの基本的な定義は同じです。戸建住宅におけるZEHは2020年ごろから広まりつつありますが、賃貸用住宅においてはそれからやや遅れて浸透しはじめています。22年度以降は、各ハウスメーカーが建築する賃貸用住宅で、ZEH-Mを推奨していますので、新規物件でZEH-Mが増えてきました。これからはZEH賃貸住宅が当たり前の時代になってくるものと思われます。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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