不動産市況

2020年 公示地価 データ分析 5年連続の上昇!

2020年 公示地価 データ分析 5年連続の上昇!

 2020年の公示地価が3月18日に発表され(詳細データは19日に発表)、全用途(住宅・商業・工業)平均が5年連続のプラスになりました。前年に続き、不動産好況の波が、さらに多くの地方圏にも波及していることが明確になりました。
 コロナウイルス騒動・日経平均株価の乱高下、東京オリンピック1年延期など、いまの日本は混沌としていますが、ネガティブな事ばかり考えても仕方ないですね! 今回は、公示地価の分析を行います。

全国では公示地価5年連続の上昇!

 公示地価は1月1日時点の土地価格を、国土交通省が地価公示法に基づき調査・発表するもので、「一般の土地の取引価格に対する指標」として、また「公共事業用地の取得価格算定、収用などの際の規準」として活用されます。

 全国の全用途平均は、前年比プラス1.4%、住宅地はプラス0.8%、商業地はプラス3.1%となり、いずれも前年の上昇率を上回りました。全国の全用途は5年連続のプラス、住宅地は3年連続のプラス、商業地は6年連続のプラスとなり、バブル崩壊以降では最も長期間の上昇を続けています。長期間の上昇が続く背景には、超低水準の金利が長く続いていること、大都市圏だけでなく、地方都市中心部でも再開発が続いていること、などが挙げられます。

3大都市圏の状況

 3大都市圏(東京・大阪・名古屋)の上昇率は、全用途2.1%(前年2.0%)、住宅地1.1%(前年1.0%)、商業地5.4%(前年5.1%)となっており、上昇幅に歯止めがかかってきました。後述する地方中核都市(札幌・仙台・広島・福岡)の伸び率の、それぞれ半分以下になっています。三大都市圏の最近の地価は、「さすがに高すぎかな」という感が見え始めているようです。
 とくに、図1,2を見れば分かるように、名古屋圏では、全用途1.9%(前年2.1%)、住宅地1.1%(前年1.2%)、商業地4.1%(前年4.7%)となり、価格上昇はしているものの、それぞれ伸び幅が前年を下回り、価格天井感が鮮明になってきました。

図1 3大都市&全国 対年変動率の推移(住宅地)
図2 3大都市&全国 対年変動率の推移(商業地)

 伸び率に歯止めがかかってきたものの、価格上昇は続いています。
東京圏では商業地は7年連続のプラス、住宅地も6年連続でプラスになっています。特に東京23区のうち、城東エリア(台東区など)での上昇が目立っています。地方中核都市の伸びが目立つのと同様に、価格上昇の先を走っていたエリアを避けるように開発が進んでいる様子がうかがえます。

3代エリア最高の伸びながらも、コロナウイルス騒動で今後に不安がのこる大阪圏

 大阪圏(大阪・京都・神戸などが中心)では、住宅地は3大都市圏での伸び率は最低(0.4%)だったものの、3都市ともにインバウンド客に人気のエリアだという事もあり、商業地は6.9%のプラスと3大都市圏で最高の伸びを示しています。しかし、ここ数年商業地地価の伸び率で沖縄に次ぐ全国2位の京都では、伸び率が低下しています。京都でのホテルが飽和状態にあり、稼働率が低下気味のようなので、心配されます。また、このエリアの商業地はコロナウイルスによる外国人観光客の大幅減少の影響をモロに受けそうですので、来年の公示地価では下がらないまでも、上昇率は大きく低下すると思われます。

上昇が鮮明になってきた地方都市

 逆に、地方圏では上昇が鮮明になってきました。

図3 地方圏対前年変動率の推移(住宅地)2013年〜
図4 地方圏対年変動率の推移(商業地)

 地方中核4市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途平均がプラス7.4%(前年5.9%)、住宅地5.9%(前年4.4%)、商業地11.3%(前年9.4%)となっています。
 これら4都市も含めた、3大都市圏を除くすべての地方圏でも、全用途平均がプラス0.8%(前年0.4%)、住宅地0.5%(前年0.2%)、商業地1.5%(前年1.0%)となり、こちらは2年連続のプラスになっています。

 地方都市の地価上昇は、あと数年は続くことが予想されます。

住宅地 都道府県別の上昇率

 では、次に各都道府県別に住宅地の地価を見てみましょう。

図5 都道府県別 対前年変動率(住宅地)

 住宅地の全国平均はプラス0.8%。最も上昇したのは沖縄県でプラス9.5%、次に宮城県3.5%、福岡県も3.5%となっています。23都道府県でプラスとなり、バブル崩壊以降では最も多くの都道府県でプラスになりました。
 石川県プラス1.7%、大分県プラス1.3%、福島県プラス0.4%あたりが、目立っています。

 逆に、下落が最大だったのは和歌山県でマイナス1.2%、次は福井県で、マイナス1.1%となっています。いずれも、マイナス幅は減少しています。

 住宅地において、来年の公示地価では、今年がマイナスの県でもプラスに転じる可能性が高いと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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