不動産市況

新型コロナウイルスの影響で浮き彫りになった、賃貸住宅経営の安定感

新型コロナウイルスの影響で浮き彫りになった、賃貸住宅経営の安定感

 新型コロナウイルスの広まりから概ね1年半が経過しました。年月が経過したことで、不動産市場に与える影響は、不動産種別により異なっていることが、浮き彫りになってきました。今回は、いつもとおもむきを変えて、「不動産市場の今後の展開と賃貸住宅経営の安定感」という内容を経済学風(数式は使わない)に解説してみましょう。

 不動産は企業や個人が日々それを使って、財やサービスを生産・提供したり(=オフィス、商業施設など)何らかの効用を得たり(=住宅など)するものですから、「社会状況の変化」により、「使われ方に変化」が起こります。使われ方とはつまり不動産の活かし方に変化が起こり、「不動産から得られる収益が上下する(=賃料が上下する)」それは価格の上昇・下落に繋がります。こうして不動産市場が変化していきます。
 ここでの不動産市場に影響を与える「社会の変化」には、一時的な変化(=新型コロナウイルスの影響が収束したら概ね元に戻る)と、構造的な変化つまりもう戻らないこと、に分ける事ができます。

一時的な変化による不動産市況の変化

 営業自粛により、都市部の多くの飲食店は営業時間を時短または休止しており、また「STAY HOME」の下で、夜の街あいかわらず以前より静かとなっています。飲食・商業施設等は現在厳しい状況ですが、影響が収まると、比較的早く回復するものと思われます。つまり、一時的な変化といえます。同様に、ホテルや観光関連施設も厳しい状況ですが、こちらはワクチン接種が進み感染者数が大幅に減ると比較的早くというよりも、溜まっていた需要が一気に噴出して堰を切ったように急回復すると思われます。昨今のANAやJAL株の急上昇、ホテル関連JREITの急上昇からも多くの投資家がそう予測しているものと思われます。
 現在、商業・飲食関連施設やホテル等の不動産市況は、良くない状況ですがコロナ禍が収束した後、半年もすれば少しずつ回復するものと思われます。

構造的な変化による不動産市況の変化

 次に、新型コロナウイルスの影響がもたらした構造的な変化(=つまり元には戻らないと思われる)変化による不動産市況の変化についてです。
 新型コロナウイルスにおける感染の広まりに伴う政府等からの要請により、日本全体に在宅勤務(=リモートワーク)が広まり、WEBなどを使った会議などが広く一般化しました。業種等によりこうした仕組みが難しいワークもありますが、「新型コロナウイルスの影響が収まっても、こうした勤務形態を続けていく」とアンケート等に回答している企業が多いようです。財やサービスの生産拠点であるオフィスのあり方に構造的な変化がもたらされています。オフィスの移転・縮小などが進んでいますが、これはもう戻らないことだと思われます。全国的にオフィス空室率の上昇はすでに始まっており、賃料の下落も見られます。これからのオフィス市場は、新たな展開を求められそうです。
 同様に、「買い物」のあり方も変化しています。新型コロナウイルスの影響によりECを使った買い物が一層普及しています。物流関連施設は今後もさらに活況が続くものと思われます。郊外型の商業施設(例えば、ショッピングセンターなど)は今後も比較的好調だと思われますが、都市部の小売商業施設は、一層厳しくなるものと思われます。

賃貸住宅市場は変わらない

 一方、新型コロナウイルスの影響があまり見られなかったのが、賃貸住宅市場です。
そもそも、「住まい」はこうした影響を受けにくいものですが、今回の新型コロナウイルスのような極めて大きなインパクトをもたらす出来事が起こっても、大きな変化は見られませんでした。
 住宅賃料は、都市部では、横ばいからやや上昇基調が続き、地方でも概ね横ばい、といった状況です。こうした傾向は、まだしばらく続くものと思われます。

  安定的な需要があることが賃貸住宅投資(=賃貸住宅経営)の特徴であることは、本コラムでも何度か述べてきました。土地活用で賃貸住宅を建築することは、言うまでもなく投資にあたります。投資においては、やはり安定感があるかどうか、は重要な要因です。今回の新型コロナウイルスの広まりという大きな出来事を経て、さらに「賃貸住宅経営の安定感」が浮き彫りになったと言えるでしょう。

  本サイトをご覧の方は、賃貸住宅経営に興味を持たれている方も多いと思います。興味を持たれている方は、ハウスメーカー等が作成しているカタログや事例集、ガイドブックなどを収取して、「実際にどんな賃貸住宅が建築されており、どんな運営サービスが行われているか」といった情報を集めるといいでしょう。

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執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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