不動産市況

賃貸管理企業は賃貸住宅需要をどう見ているか?

賃貸管理企業は賃貸住宅需要をどう見ているか?

賃貸住宅経営が始まると密な関係になる管理会社

 賃貸住宅経営が始まると、大抵の方は管理会社(PM会社)に運営にかかる多くを依頼します。この管理会社の役割は、物件の管理(維持管理・清掃・メンテナンスなど)の他、入居者管理(家賃、その他トラブル対応)という管理業務に加えて、入居者の斡旋、退去時の対応なども行います。入居者の斡旋については、管理会社が自ら行いつつ、提携している賃貸斡旋系企業と連携しつつ行われることが多いようです。
 ここに列挙したように、賃貸住宅経営にかかわる多くの事を依頼しますので、必然的に管理会社との関係は密になります。
 セキスイハイムで賃貸住宅を建てていただいたオーナー様は、例えば関東圏、中部圏、近畿圏ではセキスイハイム不動産が、それ以外のエリアでは各セキスイハイム販売会社系列の不動産管理会社が賃貸管理業務を引き受けています(エリアによっては提携管理会社)。

 このように、日々、入居者の方々や賃貸物件を探している方々と接している賃貸管理企業は、賃貸住宅における現状を肌で感じる立場にあるわけです。

賃貸住宅管理業社へのアンケート調査

 公益財団法人日本賃貸住宅管理業協会(以下、日管協と略します)は、多くの賃貸住宅管理会社、賃貸住宅斡旋会社が1668社(2020年9月現在)加盟している団体で、加盟社が管理する戸数は約830万戸(同)あり、日本最大の賃貸住宅管理業の団体です。
 日管協は、年に2回、賃貸住宅景況感調査「日管協短観」を行い、公表しています。この調査は、同協会の正会員に対しアンケートを行い集計したものです。
 21年6月に最新の調査分析結果が出ました。ここから、賃貸住宅市場における「現場の肌感覚」を見てみたいと思います。
 調査は、第25回日管協短観、調査対象は2020年度下期(2020年10月~21年3月)、調査期間は21年4~5月です。

入居率と成約賃料はどうなっているのか?

1)入居率について
入居率については、「委託管理」と管理会社との間でマスターリース契約を結ぶ「サブリース」の2つに分けて調査が行われています。
2020年度上期(4月~9月)に比べて、2020年度下期(10月~3月)は、委託管理、サブリースとも、首都圏と関西圏で入居率が上昇しています。サブリースでは全国の数字でも98%の入居率と高い値を示しています。委託管理では、20年度上期より伸びているものの首都圏が95.3%、関西圏が94.5%、全国では93.5%となっており、いずれもサブリースよりも低くなっています。
ここ数年新規供給賃貸住宅が減っているものの、賃貸住宅需要は旺盛で、入居率は増加したものと思われます。

2)成約賃料
成約賃料では、全国では大きな変化が見られませんでしたが、首都圏の2LDK以上の物件が賃料増加傾向にあるようで、所有マンションを高値で売り、一時的に賃貸住宅に暮らす方が増えた事や、リモートワークが進み、住まいのあり方を変えた方が見られたためと思われます。全般的に見ると、全国的にどの間取りも成約賃料は「上昇の兆し」が明確に出ているようです。

 管理会社の現場の肌感覚では、空室率はかなり少なくなっており、賃料は上昇基調にあることが伺えます。これまで本サイトで何度もお伝えしてきましたが、賃貸住宅経営における2つの大きなリスクは、空室リスクと賃料下落リスクです。現状では、これらのリスクはかなり低くなっていると言えるでしょう。つまり、現在の賃貸住宅需要はかなり旺盛で、この傾向はしばらく続きそうだと言えるでしょう。
 ただし、これは全国均一ということではありません。世帯数が大きく減少している地域など、賃貸住宅需要の伸びが期待できないエリアもあるので、賃貸住宅経営を行う前に「該当エリアでの今後の賃貸住宅需要の予測」を事前に確認しておくことが大切です。

まとめ

 このアンケートは、かなりの項目・分量になっています。ここでは、賃貸住宅経営を始める方が最も気になるであろう、「入居率」と「家賃」の項目について見てみました。

 最後に述べた賃貸住宅需要については、世帯数の現状と動向、今後の世帯数の予測などからも判断できます。しかし、現場で日々入居者の方々と対峙している管理会社の「肌感覚」からも、多くの事が見えてくるものと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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