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賃貸住宅ローンの金利はこの先どうなる?

賃貸住宅ローンの金利はこの先どうなる?

 低金利はいつまで続くのでしょうか?

 賃貸住宅を建築し、賃貸住宅経営を行うほとんどの方は、金融機関からの融資を受けて建築しています。そのため、賃貸住宅経営における収支計画、キャッシュフロー計画において融資金利は大きく影響します。

 一般的には(ビジネスなどで取引がある場合は、いわゆるプロパーローンと呼ばれる融資を受けることも多いようです)、各金融機関が提供する賃貸住宅を建築する際の融資(通称:アパートローン)を利用します。
 そのため、賃貸住宅を建築することが決まると、大抵の方は各金融機関の提供する「アパートローン」という商品を購入するということになります。
 今回は、アパートローンについての解説に加えて、今後のローン金利の見通しについて考えます。

アパートローンが借りられる上限年齢は?

 賃貸住宅建築用ローンは、基本的には20歳でないとローンを組むことができません。
 これは、民法の「未成年が法定代理人(=一般的に親)の同意なしに結んだ契約は無効になる」という条文があるからです。親の同意があればOKかどうかは、金融機関の判断のようです。
 逆に、アパートローンにおける年齢上の条件はないとされています。しかし、高齢の方においては、多くの金融機関では、「賃貸住宅経営(アパート事業経営)の事業承継者がいること」、が条件になっています。ちなみに、自宅建築・購入時に借りる住宅ローンには、大抵年齢制限があります。この違いは、以下に述べるような審査基準が異なる為です。

住宅ローンとアパートローンの審査基準の違い

 個人の住宅ローンでは、年齢制限があるのが一般的です。例えば、ある金融機関では70歳までといった条件があります。しかし、住宅金融支援機構が提供するフラット35では、ローン債務を子どもに引き継ぐ親子リレーローンの仕組みを利用して70歳以上の方も借りることができます。
 借入期間は、「80歳-現在の年齢」で計算するのが一般的です。例えば、45歳の方が住宅ローンを借りる場合は最長35年のローンが組めるという事になります。
 住宅ローンは、金融機関の詳細な審査基準は公表されていませんが、「契約者の収入や勤続状況、勤続年数といった属性とその方の健康状況等」が主たる基準となっているようです。つまり、住宅ローンの審査対象は基本的に契約者本人という事です。

 しかし、アパートローンでは、少し状況が変わります。
 まず、賃貸住宅の資産価値を審査します。土地の資産価値、立地条件、建物の構造種別、耐久年数など土地+建物の資産価値を審査します。加えて、賃貸住宅経営の収益力がどうかの審査があります。賃貸住宅経営という事業が上手くいくのか?という審査です。
 これら2つの項目に加えて契約者の方の資産状況なども審査されるようです。しかし、基本は、「賃貸住宅経営が上手くいくか?」が基準とされています。

金利が少し上下するだけど、支払総額は大きな違いに!

 近年のアパートローン金利は、かなり低い水準がつづいています。

 では、1%の違いで、どれくらい総返済額が変わるのでしょうか?
 賃貸住宅を建てて1億円分を金融機関から借入を行うという時、僅かな金利の違いでどれくらい返済総額が変わるのかをシミュレーションしてみます。多くの方が利用する「元利均等法式」、35年、毎月払いの例です。ここでは違いを検証するために、全期間固定金利という設定にしています(ここでは、手数料その他経費は考えません。以下同じ)。

 金利1%の場合、毎月の支払いは約28.2万円、支払総額は約1億1856万円となります。元金1億円に加えて利息1856万円となります。
 金利が0.2%上がり、1.2%となった場合、毎月の支払いは約29.1万円と9000円の差が生まれます。そして、支払総額は約1億2251万円となり、なんと約400万円の差がつきます。元金1億円に対して、その利息は2251万円となり、元金に対しては2割以上の利息を払うということなります。
 さらにもう少し金利が上がり1.5%になった場合、毎月の支払いは約30.6万円、支払総額は約1億2859万円となり、1%の金利と時に比べて支払総額で約1000万円の差がつきます。0.5%の金利差は、結構な支払総額の差になります。

この先の金利の見通し

 現在(21年10月)、アパートローンの固定金利は1%台前半~1.8%程度の金利(条件などによる)ですが、この先も概ね同水準か、もしかすると少し上昇の可能性も出てきました。ただ、仮に上昇しても僅かな上昇に留まるものと思われます。
 現在は世界的にインフレ基調にあり、アメリカ・EUなどでは、年末か年始には利上げの可能性が高くなってきています。また韓国や北欧諸国の一部では、コロナショック後からのインフレに対応するために、少し前に利上げを行っています。日本においては、CPI(消費者物価指数)などインフレ状態の指標となる指数に上昇気配がないことから、利上げは先のことと思われますが、ジワリとゆっくり上がる可能性が出てきました。
 しかし、それに伴う大きな金利上昇の可能性は低く、上がっても僅かだと思われます。概ね23年頃までは低金利が続くものと思われます。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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