不動産市況

アフターコロナ、賃貸住宅投資はどうなる?

アフターコロナ、賃貸住宅投資はどうなる?

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が5月末日まで延長となりました。4月27日(月)以降は、東京をはじめ多くの都市で新規感染者が減少基調にあります、また一人の感染者が何人にうつすかの数字も、1を大きく下回ってきているようです。しかしながら、専門家によるとまだまだ予断を許さないという状況のようで、政府はそうした状況を鑑みて、5月末までとしたようです。
 14日時点の状況を見て、早期解除の可能性もあり得るとしていますが、逆に「再延長はないのか?どうなれば月末で解除されるのか?」など不透明な事が多いのも事実です。そんな状況を見かねて、一部の知事は独自の政策を発表し、「こうなれば解除する」を示しました。とにもかくにも、一刻も早く状況が改善されることを願うばかりです。

現在の不動産市況は?

 不動産市況(=実物不動産の市況)は、タイムリーなデータがなく、たいていのデータが数か月後に公表となりますので、実態をデータで把握するにはもう少し時間を要します。
 緊急事態宣言が出されて以降、ほとんどのデベロッパー・ハウスメーカーあるいは不動産会社は、実質的に新規の営業をストップ(営業行為=接触行為の自粛)しており、営業担当者も在宅勤務をしている状況です。特に大手企業は、「もし緊急事態宣言が延長されたら、その期間を延長する」としています。ほとんど緊急事態宣言の延長は決まっているようですので、そのため4月・5月の受注契約数・取引成立は、大幅減となることは間違いなさそうです。ただ、コロナウイルスの広まり前まで、不動産市況全体でみると需要の落ち込みが、大きかったわけではありませんので、緊急事態宣言解除後、自粛ムードが減ると、反動増があることは間違いないと思います。

底堅い住宅投資~JREIT指数の市況分析~

 不動産証券化商品であるJREITは、株式と同様の扱いでタイムリーに市況が分かります。
これまでの約20年(JREITのスタートは2001年)の動きを見ると、JREITの動きに約1年程度遅れて、実物不動産の市況同じような動きを示すことが知られています。こうした事をふまえて、直近のJREITの動きを見てみましょう。

 JREITが大きく値を下げたのは3月19日前後で、2月下旬頃まではかなりの高水準でしたので、そこから一気に半減しました。東証REIT指数(全体)は2月20日ごろ 2250ポイント辺りだったものが、3月19日には1150ポイント前後になっています。
現在はそこから少しもどしており(4月末日:1600ポイント前後)、ピークからは概ね3割減といったところです。

 少し細かく分野別にみると、ホテル系REITは(下落ピーク)約70%減→(直近の水準)60%減、商業系が約60%減→55%減、オフィス系45%減→30%減、となっています。これらが戻すのには相当な時間がかかると思います。(数字は概数:以下同様)

 逆に落ち込みが少ないのは 住宅系45%減→15%減、物流系20%減→5%減、と巣ごもり消費による通販の進展が物流業の後押しになっていますので、これに好感を示していることがわかります。また、不動産の中でも最も安定感のある住宅系投資ですが、この時勢でも住宅系は、多少落ち込みがあるものの安定感を見せています。

住宅賃料はどうなる?

 次に、住宅賃料についてですが、緊急事態宣言・自粛ムードがいつまで続くか分かりませんが、予定通り5月末で解除(もしくは、その前に解除)だとすれば、今後の住宅賃料にそれほど大きな影響はないと思います。長期的に見て日本の住宅賃料はインフレ連動していますが、景気低迷期に目だった下げは起こしていません。しかし自粛ムードが長引くとすれば、ある程度の高額(概ね30万円以上)賃貸物件賃料は下がる可能性があります。個人事業主、経営幹部層がメインターゲットの物件では所得の減少可能性があり需給バランスが崩れる可能性があるからです。
 逆に、一般的なファミリー向け、ワンルームやカップル向け物件の賃料ですが、需給バランスで考えると、ほとんど下がることはないと思います。理由としては、需要が旺盛な状況が続いていることがあげられる。
 また、こうした物件のメインターゲットの若年層~30代の所得に大きな変化はないと思われます。もし、ネガティブに見るとしても、短期的にみれば、来年あたりもしかすると僅かに下がるかもしれませんが、限定的・かつ一時的にとどまり、すぐに回復、そして上昇基調になると思います。

 早く緊急事態が解除され、一刻も早く元どおりの日々に戻ることを期待したいものです。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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