不動産市況

不動産の4つの価格と2020年路線価について

不動産の4つの価格と2020年路線価について

4つの不動産価格

 不動産(土地)には4つの価格があるとされています。
 その4つとは、公示価格(公示地価)、路線価、基準地価、そして実勢価格です。
 公示地価は、価格時点をその年の1月1日として毎年3月20日ごろに発表されます。メディアでも大きく取り上げられる土地価格で、例えば道路ができるために国や都道府県により収用となった土地の算定の規準となります。路線価は、相続税や贈与税の算定基準となるもので、価格時点は公示地価と同じ1月1日で発表は7月1日です。これらは、それぞれ国土交通省・国税庁と国が主体となっております。
 また、基準地価は都道府県が主体となって鑑定しており、価格時点は1年のちょうど真ん中の7月1日で、発表は9月1日となっています。最後に、実勢価格ですが、これは日々取引されている価格ですので、刻々と変化します。

路線価の適用について

 その路線価の2020年分が、7月1日国税庁から発表されました。路線価は発表される地価の中で、不動産投資あるいは土地活用を考えている方には「重要な地価」と言えます。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つあり、それぞれの税金算出のための評価額算定に用いられています。公示地価の概ね7~8割程度とされています。

 路線価は、国有地以外の土地に、つまり所有すると税金のかかる土地に適用されます。(国有地には税金がかかりません。)
 また、宅地、田、畑、山林等が対象として定められています。公示地価と異なり路線価等の評価における宅地とは、住宅地、商業地、工業地等の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地を指します(その他に軍用地などにも適用されます)。参考までに、公示地価では、住宅地・商業地・工業地に分かれています。

路線価と新型コロナウイルス騒動

 路線価の価格時点は、1月1日時点ですから、2月以降日本のみならず各国の経済に大きな影響を与えている新型コロナウイルスの影響を受ける前の数字ということになります。
 国税庁から発表される路線価は、いうまでもなく税を算定するためにその土地の評価額を明確にする目的で存在しているわけです。そのため、価格時点(1月1日)から、公表時(毎年7月1日)までの間に大きな災害等が起こると、評価額の修正が行われることになります。近年では、東日本大震災の時や後述する2016年4月に起こった熊本地震の際にはその後修正となりました。今年2月ごろからの新型コロナウイルスの影響が不動産価格に影響が少なからず出ていると思われます。もし大きな影響があると算定されれば、東日本大震災や熊本地震の時のような修正があるかもしれません。

2020年路線価の状況

 2020年最も高額だったのは、今年も東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りで4592万円(1㎡あたり)となりました。ただし伸び率はそれほど大きくなく昨年からの上昇率は0.7%に留まりました。ちなみに一昨年→昨年はプラス2.9%でしたので、伸び率の鈍化が分かります。
 各都道府県別最高価格地点の路線価上昇率を順に並べてみると第1位は、沖縄県那覇市の最高地点(国際通り)でプラス40.8%でした。昨年の上昇率が39.2%でしたので、この2年間だけで約2倍の路線価になっています。
 同2位は大阪梅田付近の御堂筋で今年はプラス35%、昨年の上昇率は27.4%とこちらも大幅に上昇しています。以下、横浜、奈良、京都、神戸、札幌と続き、新型コロナウイルスの影響が出るまではインバウンド観光客がとても多く来ていた場所といえます。そのため、インバウンド観光客の大幅減少がどれほど不動産価格に影響があり、そして路線価に影響があるのか、気になります。

2016年熊本地震による評価調整の状況

 こうした懸念を考えると、路線価の修正が行われることが考えられます。
そこで、近年路線価の評価調査が行われた2016年の熊本地震の時の状況を見てみましょう。
熊本地震は2016年4月14日と16日に震度7の地震が2度連続して起こりました。その影響で熊本県と大分県(一部)に大きな被害が出ました。
 そのため、 こうした対象地域に該当する土地に対して、2015年6月14日から2016年4月13日までの間に相続等により取得した土地等と2016年1月1日から2016年4月13日までの間に贈与により取得した土地等に対して、地価下落を反映した「調整率」をかけることになりました。
 この際の国税庁のサイトをみると、「平成28年熊本地震の発生直後の価額は、この「調整率」を2016年分の路線価等(路線価及び評価倍率をいいます。)に乗じて計算することができます」、という記載があります。
 調整率の表も同サイトに細かく出ており、宅地は概ね95%の評価(つまり-5%)~100%となっていますが、被害が大きかったとされている益城町あたりでは75%評価の所もあります。
 調整の表を見ると、被害の状況により細かく再評価されていることがうかがえます。

2020年路線価の修正はあるのか?

 国税庁によると、9月ごろに国土交通省から公表される基準地価(価格時点は7月1日)を考慮して、基準地価が広範囲で大幅に下落した場合、国税庁は地域ごとに一定の係数を路線価に乗じて減額する案を検討しているようです。
 これまで、東日本大震災や熊本地震の時のように、災害が原因による調整が行われてきましたが、こうした新型コロナウイルスという感染症による路線価の見直しは、これまで見られなかったと思いますので、9月以降、国税庁からの発表に注目が集まります。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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