不動産市況
最新人口動態
3月末から4月初旬にかけては、「就職、進学、転職、転勤」といった都道府県を跨ぐ移動が増える時期です。そして、このような「人生の転機」とも言える移動には、住居の移動が伴います。進学する方の増減、仕事を求めて街を出る方の増減にともなう、都道府県や市町村などを跨ぐ人の移動の動向は、社会状況を大きく反映します。つまり、人の移動=住居の移動と考えると、人口移動状況を分析することで住宅需要を推し量ることができます。
人の移動が復活の傾向
先ごろ、総務省から2022年1年間分の人口移動報告が発表されました(1月30日発表)。
この調査は住民基本台帳に基づき、都道府県や市町村を跨ぐ転入・転出といった移動者数を集計したものです。
2022年の1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方(日本人及び外国人含む、以下同)は、255万3434人となり前年比で+7万6,794人(+3.1%)となりました。20年の1年間では、新型コロナウイルスの影響が大きく、2019年の1年間に移動した実数から-104,904人と大幅に減少、その後21年は前年比+12,648人、22年は+76,794人となり、都道府県を跨ぐ移動が戻ってきていることが分かります。
39の都道府県で前年比増加!東京都への転入者は44万人
2022年の1年間に転入者が最も多かったのは東京都で約44万人、2番目は神奈川県で約24万人でした。その後、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県と続きこれらの都府県が10万人以上の転入者数、以上7県で全国の転入者の約56%となっています。21年と比較して転入者が最も増えたのは東京都で、約2万人(+4.7%)増えました。続いて、大阪府、福岡県となっており、転入者数は39都道府県で増加となっています。一方、転入者数が減少したのは8県で、福井県が最も多く減少しました(-1,154人)。
東京は前年比3万2000人を超える転入超過
転入者から転出者を引いたものが、転入超過数です。(引き算がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過です。)
転入超過が見られたのは、全国47都道府県のうち11都府県でした。最も多いのは東京都の約3.8万人、次に神奈川県の約2.8万人でした。東京都は、昨年の転入超過は5,433人でしたので、前年に比べて32,590人転入超過数が増えたことになります。前年に比べ転入超過が増えたのは4都府県でした。
その他の主要地域の転入超過数は、大阪府は6,539人(前年は5,622人)、福岡県は4,869人(前年は5,792人:転入超過数マイナス)で、愛知県は転出超過で-7,910人、前年は2,747人の転出超過でしたので、転出超過数が増えている状況です。
東京都では2019年が約8.2万人の転入超過でしたが、21年には約5,400人まで減少、それからおよそ半分くらいの水準にまでもどりました。東京23区(特別区)への流入は前年比でプラス約2万人となっており、都心への人口流入が復活していることもうかがえます。
少し広くみて、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では約9.4万人の転入超過、21年が約8万人でしたので、だいぶ回復したと言えそうです。一時的に落ち込んだ、東京への人口流入、東京一極集中の傾向が再び加速してきたと言えるでしょう。
男女別・年代別の人口移動
次に、年代別の動きを見てみましょう。
都道府県移動者を男女別に見れば、男性は前年比39,494人(+2.9%)の移動者数増、女性は37,300人(+3.4%)の移動者数増加となりました。
5歳刻みの年齢別でみれば、最も移動が多いのは20-24歳(約58.8万人)、次に25-29歳(約52.7万人)、30-34歳(約31.2万人)、35-39歳(約20.1万人)、そして15-19歳(約14.3万人)と続きます。このうち、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳では2021年よりも移動者が増加しました。これを、年齢でみれば、都道府県を跨ぐ移動が最も多いのは22歳、次に24歳となっています。
こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動の最大の理由は「就職や仕事に関すること」だと考えられます。次は、大学や専門学校などへの進学のようです。
賃貸住宅需要の増加要因
賃貸住宅需要を支える要因には、「転入者が増えること」、や「賃貸住宅志向の高まり」等があげられます。これを1Rや1LDKといった単身世帯向けの物件に限れば、「転入者が増えること」は、最大の要因と言えるでしょう。
就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸住宅に住みます。とくに20代・30代前半の方々の仕事理由による移動が復活してきていることは、賃貸住宅需要には追い風だといえるでしょう。
執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所