不動産市況

業界が大きく変わる!不動産IDの導入について

業界が大きく変わる!不動産IDの導入について

 「不動産ID」というワードをご存知でしょうか? 土地や建物に番号(ID)をつける仕組みで、現在国土交通省や法務省など省庁横断で進められています。
 今回は、不動産IDについて解説します。

不動産IDシステム導入の背景

 我が国の不動産(土地・建物)においては、幅広い主体で共通で用いられている番号(ID)が存在していません。
 そもそも不動産は登記することで、不動産の権利関係を明確にし、そして国が一括管理、またその権利を証明することになっています(その対価として登録免許税を払います)。その際に、不動産登記簿に不動産番号(13ケタ)が付与されています。
 これはあくまでも、不動産登記に使われる番号となっています。また、登記簿に登録する土地や建物の所在については、住居表示(住所)ではなく、地番・家屋番号のため、同一物件か否かが直ちにはわからないことが多く、この点が不動産関連情報の連携・蓄積・活用における課題となっています。例えば、ある物件では一丁目二番地3、 また別の物件では一丁目二番地三号、など漢数字の表記や番地の表記、などバラバラとなっているのが現状です。

 このような現状を再整備し、不動産を一意に特定することができる「不動産ID」のルールを整備することで、不動産関連情報の連携・蓄積・活用や消費者への的確な情報発信等を促進することが可能になります。
 そうすれば、不動産業界全体の生産性及び消費者利便の向上を図るとともに、不動産DXを強力に推進する上での情報基盤整備の一翼を担うことに繋がり、また電気・ガス・水道・通信等の生活インフラ、まちづくり、物流分野等のより広い社会における活用も期待できます。

国をあげてDX化への取り組み

 2021年5月にデジタル改革関連法案が成立、そして同年9月にデジタル庁が創設され、国主導で我が国はDX化を推進することになりました(当時は菅内閣)。また、新型コロナウイルスが蔓延し、社会のあり方、ビジネスのあり方も大きな変革期になっていることも、デジタル化推進の後押しとなりました。
 また、不動産業界は、「DX化がもっとも遅れている業界」とも言われており、人的つながりで動く業界体質であり、「不動産」という動かないものを扱うため、DX化が合わない、とも言われていましたが、現在では大きく動き始めています。

不動産情報の非対称性の解消

 現在、土地・建物とも幅広い主体で共通に用いられる番号(ID)は日本にはありませんが、アメリカでは、以前から不動産IDの付与は行われており、それをもとに個別不動産情報を誰でも見ることのできる、MLS(Multiple Listing Service)システムが幅広く利用されています。このサイトにアクセスすれば物件情報だけでなく、物件の売買履歴やリフォーム履歴などがわかります。
 日本の不動産においては、物件情報収集の手間がかかるだけでなく、情報の非開示などの流れにより、情報の非対称性が存在しています。このことは、不動産系企業のビジネスの源泉となっているわけですが、これでは「情報の非対称性」が解消できず、公正な取引が阻害される恐れがあります。
 不動産IDを整備し、情報ストックシステムを構築し、広く公開すれば、こうしたことも解消できます。

【不動産IDルール案】

 不動産IDの整備は、現在進められているところですが、国土交通省資料によると、以下のようなIDルールになるようです。

土地:不動産番号(13ケタ)+ 特定コード(4ケタ)

戸建:上記に同じ

賃貸マンション等:不動産番号(13ケタ)+ 部屋番号(4ケタ)

商業建物:不動産番号(13ケタ)+ 階層コード(2ケタ)・階数(2ケタ)

区分所有建物:不動産番号(13ケタ)+ 特定コード(4ケタ)

(注:不動産番号=登記簿の番号)

【不動産ID活用方法とメリット】

 以下は、国土交通省が想定している不動産ID活用方法とメリットです。

1)不動産に関する様々な情報が、段階的に、IDと紐付けられた形で蓄積され、連携していくことで、その利活用が進んでいくと考えられる。

2)一義的に不動産の特定が可能になることにより、物件情報の名寄せ・紐づけの容易化、不動産情報サイトにおける重複掲載等の排除、各種入力負担の軽減、住宅履歴情報等との連携が可能。

3)不動産関連情報や空間情報等との紐づけが可能になれば、生活インフラ情報等の統合管理、行政保有情報の照会容易化・調査負担の軽減や重要事項説明書の作成負担軽減に加え、まちづくり、物流等の幅広い分野での活用も想定。

以上、早期に仕組みができることを期待したいものです。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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