不動産市況

再加熱の様相?過熱する不動産投資のゆくえは?

再加熱の様相?過熱する不動産投資のゆくえは?

 日銀は7月21日金融緩和政策決定会合を受けて、「経済の回復を支えるため、金利を低く抑える今の大規模な金融緩和策を続ける」ことを決めました。海外の利上げが相次ぎ、不動産投資家の方々にとっての大きな懸念材料のひとつであった「金利上昇」の可能性は、ひとまずは落ち着いたと言えそうです。
 一方で、国内の不動産市場は未だ活況が続いている状況です。今回は、融資の側面から、再加熱の様相の不動産投資について見ていきたいと思います。

不動産業向け融資残高で見る再加熱の気配

 2013年からの日銀による金融緩和政策、低金利を背景に不動産業向け融資が増えてきました。そんな中、2018年に投資用物件での不正融資問題が相次いで浮上。その後、金融庁の監視強化で金融機関は不動産系への融資に慎重になっていました。
 更に新型コロナウイルスの蔓延に伴い、不動産向け融資の伸び率は減少傾向になっていました。しかし21年後半から、再び上昇基調となっています。不動産投資の需要が高まる中で、金融機関においても、確実に需要のある不動産業への融資を拡大させているようです。特に、ある程度体力のある地銀は、かなり積極的に不動産向け融資を再開させています。

不動産業向け融資残高の推移(日本銀行)

 それでは、個人向けの不動産投資に関する融資はどうでしょうか?

個人の貸家業向け融資も増加が顕著に

 図2は、個人の貸家業(マンション建築・経営など)に対する新規融資の推移を表したグラフです(新規貸出金額は、四半期移動平均です)。ここでの「個人の貸家業」とは、サラリーマン大家のイメージが近いでしょう。

 12年後半から増えた個人の貸家業向け融資ですが、2017年頃がピークで、さらに前述の不正融資問題をきっかけに、急減します。しかし、コロナショック以降、2020年後半から再び上昇に転じています。この背景には、先に述べたように、金融機関において安定した貸出先が増えないことが大きな要因と思われます。
 加えて、個人不動産投資家による不動産投資が再加熱し、それに対しての融資を行っていると思われます。

 最近では、円安の影響を受けて海外の不動産投資家も日本不動産に多数参入してきています。また、22年に入っても、未だ首都圏や近畿圏などの都市部のマンション価格は、新築・中古ともに上昇を続けている状況です。

 このように過熱が続く我が国での不動産投資は、冒頭に述べた日銀の金融緩和策続投の報道を受け、ますます不動産投資の好況が続くものと思われます。

個人による貸家業に対する設備資金新規貸出(日本銀行)

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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