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生産緑地の土地活用のススメ②
改正生産緑地法と土地活用の具体策

生産緑地の土地活用のススメ② 改正生産緑地法と土地活用の具体策

 「生産緑地の土地活用」シリーズ第1回目は、「生産緑地の概要、制度の変更」などについて解説しました。
 第2回目の今回は生産緑地法等の改正に伴い、「生産緑地地区内における建築規制の緩和」が行われましたので、そのことについてお伝えします。

改正前の生産緑地地区内における建築物について

 生産緑地地区は、農地などとして活用することになっていますから、当然その地区内には、その活動に必要なモノ(農業用施設)しか建てられないという厳しい規定がありました。しかし、以前より生産緑地地区内に土地を所有する農業団体などから、農地でとれた農作物などを直売する施設の設置などの要望がありました。また、農業の6次産業化を進める国家戦略会議にて、農家レストランの設置についての検討がありました。

農家の6次産業化とは

 農家は言うまでもなく漁業や林業等と同じく1次産業にあたります。中学の社会科で習ったことの復習となりますが、2次産業は工業や建設業などで、3次産業は商業やサービス業、あるいは金融業等を指します。一般的には、発展途上国(後進国)では1次産業が中心となり、先進国になるにつれて、2次産業、3次産業の割合が多くなります。ちなみに、2000年以降に言われ始めた4次産業は、情報通信、医療サービスといった知識集約系産業を言います。数字が大きくなるにつれて、現在の資本主義社会においては、利益率が高いと言われています。現在のように高度に資本主義化が進んだ状況下では、よほど大規模に運営しない限り1次産業は、産業の競争力が低い状況になります。

 こうした状況下で、農家などの6次産業化が一部で推進されてきました。1次+2次+3次=6次という意味です。
 農作物を作る1次産業、それを実際に加工製造(農作物を加工品にする)、2次産業、そして農家がとれたての野菜などを提供するレストランを運営すれば3次産業となり、これらを全て行えば6次産業ということになるわけです。

改正前に設置可能だった施設

 生産緑地地区内に設置可能な施設は、農業を営むために必要で、生活環境の悪化をもたらすおそれがないものに限定されていました。

 具体的に設置可能な施設を列記すると、(以下①~④、国土交通省資料をもとに作成)

① 生産又は集荷のために使う施設
ビニールハウス、温室、育種苗施設、農産物の集荷施設 等

② 生産資材の貯蔵又は保管のために使う施設
農機具の収納施設、種苗貯蔵施設 等

③ 処理又は貯蔵に必要な共同利用施設
共同で利用する選果場 等

④ 休憩施設その他
休憩所(市民農園利用者用を含む)、農作業講習施設等

と、かなり絞られていました。

改正後に設置可能になった施設

冒頭で述べたように、「営農継続の観点から、新鮮な農産物等へ」の需要に応える形で、生産緑地地区内で農業を営む方々の収益性を高める下記施設が追加されました。

 追加で設置可能となった施設(以下、同)

① 生産緑地内で生産された農産物等を主たる原材料とする製造・加工施設

② 生産緑地内で生産された農産物等又は①で製造・加工されたものを販売する施設
(産直販売施設のようなもの)

③ 生産緑地内で生産された農産物等を主たる材料とするレストラン
(農家レストランのようなもの)

 ただし、生産緑地の保全に無関係な施設(単なるスーパーやファミレス等)の立地や過大な施設を防ぐため、省令で下記基準を設けることになっています。

1)残る農地面積が地区指定の面積要件以上

2)施設の規模が全体面積の20%以下

3)施設設置者が当該生産緑地の主たる従事者であること

4)食材は、主に生産緑地及びその周辺地域で採れたものであること

以上のように、生産緑地を活かして使う事で農業従事者の方々が収益を上げやすい施設の設置が認められるようになりました。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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