不動産市況

脱炭素時代の賃貸住宅のあり方とZEH基準クリア賃貸住宅について

脱炭素時代の賃貸住宅のあり方とZEH基準クリア賃貸住宅について

 5月26日 改正脱炭素法案が成立、22年4月からの施行を予定しているようです。各メディアが報じたように、これは4月に行われた「気候変動サミット」からの流れと言えます。

気候変動サミット

 2021年4月22日~23日の間、アメリカ、バイデン大統領の呼びかけで、気候サミット が開催され、先進国各首脳、企業や団体の代表者など40名超が参加しました。ここで、温室効果ガスの削減に向けた取り組みなどの協議が行われました。

 参加の各国々が、「自国の温室効果ガス削減目標の引き上げ」や、「脱炭素化に向けた取り組み」を発表、各首脳が声明を出し、世界の脱炭素化に向けた国際協調について言及しました。
 菅総理は、「2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、我が国は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けてまいります。この46%の削減は、これまでの目標を7割以上引き上げるもので、決して容易なものではありません。しかしながら、世界のものづくりを支える国として、次なる成長戦略にふさわしいトップレベルの野心的な目標を掲げることで、我が国が、世界の脱炭素化のリーダーシップをとっていきたいと考えています。今後、目標の達成に向けた施策を具体化すべく、検討を加速します。」(菅総理声明文からの抜粋)と声明を出しました。

 こうした政府の対応に呼応するように、日本の主要企業はそれぞれ、目標達成に向けた取り組みを始めています。セキスイハイムにおいても、コーポレートサイトで表明をしています。

異常気象が異常気象でなくなる

 21年5月19日より、天気予報などで使われる「平年値」が変わります。気象庁が直近30年間の数値を基に算出するものが、10年ごとにスライドし、これまでは1981年~2010年まででの平均でしたが、これからは1991年~2020年までのものになります。これにより、これまでの平年値よりも高くなる季節・地域が多く、年平均気温では0.2~0.5℃程度高くなるところもあります。真夏日(日最高気温30℃以上)の年間日数の新平年値は、東日本から沖縄・奄美の多くの地点で 3 日以上増加し、猛暑日(日最高気温 35℃以上)が 4 日以上増える地点もあります。また、降水量では、夏の西日本や秋と冬の太平洋側の多くの地点で10%程度多くなります。降雪量は、新平年値では多くの地点で少なくなっており、30%以上減る地点もあります。冬日(日最低気温0℃未満)の年間日数の新平年値は北日本から西日本の多くの地点で2日以上減少します。
 こうしてみると、温暖化がジワジワと確実に進んでいることが分かります。そしてその影響なのか降水量が増えています。

ハザードマップの告知、義務付け

 温暖化の影響からか、近年は大規模水災害の頻発により、それに伴う大きな被害が生じています。そのため不動産の各種取引時においても、水害リスクに関する情報が、これまで以上に契約締結の意思決定を行う上で重要な要素となっています。こうしたことから宅地建物業法施行規則が改正され、2020年8月28日以降、水害(洪水、雨水出水、高潮)ハザードマップ上の記載状況が重要事項説明に加わりました。想定域内はもちろん、浸水想定区域外の売買仲介や賃貸物件の仲介にも説明が必要になりました。

異常気象がニューノーマルになる賃貸住宅のあり方

 ここまで述べたような様々なことから考えると、間違いなくこれから、賃貸住宅のあり方が変わっていくものと思われます。

 浸水想定区域やそれに類する地域での新規建築ですが、言うまでもなくこのような地域において土地の有効活用は求められます。こうした地域での新たな賃貸住宅建築の際には、「万が一」に対応できる賃貸住宅にするべきだと考えます。利回り重視の安かろうの賃貸住宅ではなく、しっかりとリスク対応した賃貸住宅を建てることが必要だと強く思います。

ZEH基準を満たした賃貸住宅

 温暖化対策がしっかりとされた賃貸住宅、例えばZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たした賃貸住宅を建てることは多少割高になるとしても、これからの時代に求められるでしょう。

 「ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の頭文字をとったものです。住まいの断熱性・省エネ性能を上げること、そして太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をゼロ以下にすることを目指した住まいです。」「」内の文章はセキスイハイムサイトから引用しましたが、セキスイハイムでは、戸建住宅においても賃貸住宅においても、ZEH基準を満たした住宅建築を推進することで、社会貢献をしていることが強く伝わってくるメッセージだと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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