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生産緑地の土地活用のススメ① 生産緑地とは何か。制度の変遷

生産緑地の土地活用のススメ① 生産緑地とは何か。制度の変遷

 これから、生産緑地について、何回かに分けて解説していこうと思います。
 第1回目の今回は、生産緑地についての概要、そして制度の変更などについて解説します。

生産緑地とは

 「生産緑地」という言葉を聞いたことがありますか。2017年前後に盛んにメディアでも報じられましたので、ご存知の方も多いと思います。
 生産緑地とは、大都市圏を中心とした特定市の市街化区域内にある農地のうち、良好な都市環境、住環境を維持するために「生産緑地法」により指定を受けている農地のことを指します。
 生産緑地法(1974年制定)を見てみると以下のような記述があります。
 「この法律は、生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。」(生産緑地法第1条)。
 第2条には、「国及び地方公共団体は、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び将来の見通しを勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより良好な都市環境の形成に資するよう努めなければならない」とあります。つまり、行政が主体となって環境保全を行うために指定する、ということになっています。
 しかし、この制度下(旧生産緑地法)の頃は、ほとんど指定を受ける農地がなく、バブル期になり、地価の高騰が都市から農地や緑地を奪っていく中で、1992年(平成3年)に法改正が行われます。現在存在する「生産緑地」の多くは、この時に指定を受けたものです。
 指定を受けなかった市街化区域にある農地は、税の重さ、地価の上昇などが相まって手放す方が多く、その面積は年々減少しています。(概ね半減しています。)その一方で税の軽減のある生産緑地の減少は僅かに留まっています。その結果、2016年時点三大都市圏の市街化区域内農地の約5割を生産緑地が占めています(国土交通省:平成31年特定生産緑地制度資料)。

生産緑地の2022年問題とは

 先に述べたように、生産緑地に指定された農地のうち圧倒的多数は、1992年の新制度導入時に指定を受けているため、2022年には面積ベースで概ね8割にあたる生産緑地が、指定から30年が経過することになります。これがどうなるか、もし大量に放出されたら(指定の一斉解除が行われたら)、需給バランスが崩れて地価下落になるのではないか、と騒がれたのが2017年頃に多く報じられた「生産緑地の2022年問題」です。

生産緑地法の改正

 こうした流れを受けて、つまりいわゆる「2022年問題」の対応として、そして都市における生産緑地保全のために、2017年に生産緑地法が改正されます。
 主な改正点は、

  これらについては、次回以降で詳しく解説します。

特定生産緑地制度とは

 そして、平成30年(2018年)に「特定生産緑地制度」が施行されることになりました。
 特定生産緑地制度とは、どんな制度でしょうか。

 ここでは、「特定生産緑地制度の手引き平成31年3月版」(国土交通省 都市局 都市計画課 公園緑地・景観課 資料)を基に簡単にまとめておきます。

 ここまで、生産緑地制度の変遷と大まかな概要をお伝えしました。
生産緑地を所有するオーナー様におかれましては、高齢の方も多いようです。制度のことがよく分からない、あるいは今後どのように対応したらよいか分からない等があれば、まずはセキスイハイム等の専門家に相談するといいと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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