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アパートローンの概要と賃貸住宅融資金利の推移

アパートローンの概要と賃貸住宅融資金利の推移

 賃貸住宅を建築、購入される大半の方は、金融機関から融資を受けます。金利が上がれば収益シミュレーションに大きな影響がでますので、注視しているオーナーも多いと思います。ここでは、住宅ローンに比べて、意外と知られていない、賃貸住宅向け融資(アパートローン)について解説したいと思います。

アパートローンの概要

 所有する遊休地を土地活用として賃貸住宅を建築、また土地を購入して賃貸住宅を建築する場合の金融機関からの融資はアパートローンと呼ばれ、建築する方の大半が融資を受けます。ちなみに、一般的なアパートローンは「賃貸用住宅の土地・建物の取得資金」だけでなく、賃貸住宅のリフォーム工事などに適用されます。
 一般的な住宅ローンの金利は、歴史的に「国民の住宅取得支援」の意味合いの強い融資ですので、かなり低く抑えられてきました(それが現在も続いています)。しかし、アパートローンは、あくまでも投資用の融資でありますので、低い金利が設定されている住宅ローンに比べて、その金利は高くなります。
 融資を提供する金融機関は、民間金融機関もしくは公的色の強い住宅金融支援機構(独立行政法人)や日本政策金融公庫(財務省管轄の株式会社)が主です。民間金融機関では、メガバンクや融資に積極的な一部地銀がアパートローン商品を持ち合わせています。
 住宅金融支援機構のアパートローン融資は、省エネ適合賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅など、融資を受ける事のできる賃貸住宅に制限がありますのでご注意ください。
詳しくは、下記を参考にしてください。
https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/syoenechintai/index.html

アパートローンの年齢制限は?

 住宅ローンの場合、年齢上限が設定されています。また、完済時年齢上限も設定されていますので、例えば80歳完済上限の場合、50歳の方が借りることのできる期間は30年がMAXです。一方、アパートローンの融資期間はこうした年齢制限はありませんが、概ね期間は最大35年までとなっています。
 これらの理由は、住宅ローンの場合の審査基準(対象)は、借りる方ご本人の収入がメインとなります。つまり年収や就労状況等なので、さすがに80歳を超えて年金などで安定収入は難しいだろう、という見立てということです。一方、アパートローンの場合、審査基準(対象)は、もちろん融資を受ける方の状況もありますが、メインは物件の担保価値と賃貸住宅経営における収益の見通しです。そう考えると、年齢はあまり関係なくなり、逆に築35年を超える賃貸物件では資産価値低下や収支状況の悪化可能性が出てくることも予想されるため、35年という年数で区切っているわけです。

賃貸住宅融資金利の状況

 ここからは、アパートローンの金利の状況を見てみましょう。
 金融緩和政策、低金利政策が続く我が国の住宅ローンは民間金融機関の変動金利で0.3~0.5%、フラット35(35年固定、融資率9割以下)で1.4~1.5%程度と、依然低い状況です。
 賃貸住宅建築時融資の「アパートローン」も民間金融機関の店頭金利では3%程度ですが、実際は優遇金利の適応などで概ね1%台半ば~2%弱程度となっています(22年10月下旬時点)。
 いま述べたように、民間金融機関のアパートローン金利は、優遇金利の適応がありますので、状況が見えにくいため、ここでは住宅金融支援機構の賃貸住宅向け融資金利を用いて状況を見ていきます。(前述の通り、対象物件に制限があります)

(図1)住宅金融支援機構 賃貸住宅向け融資金利の推移(20年4月~22年10月)

 図1は、20年4月から22年10月までの住宅金融支援機構賃貸住宅向け融資金利の推移です(データは、繰り上げ返済なしの金利。独立行政法人住宅金融支援機構より。9月29日時点公表)。

 これをみれば、20年4月から21年秋ごろまでは、15年固定金利では概ね1.4%前後で推移し、35年固定金利では1.8%前後で推移していました。
 しかし、その後15年固定金利はジワジワと上昇し、10月融資分は1.72%となっています。35年固定金利では21年秋から上昇したものの、いったん22年4月からは金利が下落、しかしその後は再び上昇基調にあり、10月分では1.88%となっています。

今後の賃貸住宅融資金利の見通し

 この先の金利のゆくえを占うのは難しい局面にありますが、10月28日の日銀金融政策決定会合では、金融緩和政策の維持が全会一致で決まりました。そのため、しばらくは現在の低水準が続くものと思われますが、23年度(4月~)からは、状況がかわるかもしれません。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

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