不動産市況
新総裁の下で行われる日銀金融政策決定会合と不動産市況に与える影響
1月17-18日に開かれた日銀金融政策決定会合では、大きな金融政策の変更はありませんでした。12月20日の会合では、10年物国債の買い入れ金利の上限が0.25%から0.5%に変わったことで、マーケットは大きく動きました。1月の会合でも実質利上げの可能性を見込んで、直前の国債市場では金利上昇する場面もありましたが、「政策に変更なし」との決定を受けて、落ち着きを取り戻しました。
今回のコラムでは、日銀の金融政策にフォーカスしながら、それが不動産市況に与える影響について考えてみます。
日銀総裁の交代
金融政策を決める中央銀行。わが国では日銀がその役割を担います。総裁1人、副総裁2人、審議委員6人合計9人の政策委員会委員により、金融政策を決める金融政策決定会合が、概ね2か月に1度開催されています。
2023年の日銀金融政策決定会合は、年初から年度内では、1月17-18日(すでに終了)、3月9-10日に開催されます。ここまでが、現総裁である黒田総裁の下で行われます。1月23日から開かれている通常国会の中で岸田総理は、「2月中には日銀の新総裁人事を国会に提示する。また、黒田総裁の再登板はない」と発言がありました。これにより、旧大蔵省出身の黒田総裁は2013年4月9日に日銀総裁に就任し(実際は白川前総裁が任期前の3月19日に退任したため、4月9日までの20日間も総裁業務を行う)、10年に任期を終え、2023年4月8日に退任することが決まりました。
金融政策と不動産市況
日銀が決める、「金利やその他金融政策」は、不動産市況はもちろん経済状況に大きな影響を与えます。いうまでもなく、政策金利の上昇は「景気上昇スピードを抑える」、つまり「政策的に需要を抑える」方針を示すことになります。金利上昇は、「借入を伴う、投資・購入を抑える」効果があります。価格上昇局面で金利上昇すれば、需要が減少、需給のバランスが変動し、上昇を抑える効果が生まれる、という流れです。
自宅の購入、不動産への投資、いずれも、その大半は金融機関からの借り入れで行われます。そのため、金利上昇はこれらを抑えることに繋がります。
こうしたことから、もし金利の上昇があるようなら、好調が続く不動産市況に水を差す可能性があります。
しかしその一方で、日米の金利差が広がる傾向が収まるということにもありますので、円安から円高方向へ進むことになります。その影響で、日経平均は下がる可能性が高くなり、株式市場で利確が行われ、そのお金がJREITや実物不動産など不動産資産への移動が起こる可能性があります。こうして考えれば、金利上昇により直ちに不動産市況悪化という状況にはならないでしょう。
新総裁の元での金融政策と展望レポート
新たな年度を迎え、新総裁の下で開催される初回の会合は、4月27-28日に行われます。思い起こせば、2013年に黒田総裁が就任したこのタイミングで「異次元緩和政策」が発表されました。今年4月の新総裁が初めて行う日銀金融政策決定会合後の会見は、大きな注目を集めるでしょう。次期総裁候補・植田氏の発言からは、現在の日銀の政策(金融緩和)を継承するものと思われます。
そうなれば、この先の日本の金利に関することでは、仮に金利上昇を呼び込む政策としては、10年物国債買い入れの幅が現在の±0.5%から±0.75への変更、もしくはイールドカーブコントロールの対象国債を現行の10年物から7年物の変更、などが考えられますが、基準金利の変更はないものと思われます。
また、この会合の2日目には、「経済・物価情勢の展望」(通称:展望レポート)が公表されます。このレポートは、年4回(通常1月、4月、7月、10月)の政策委員会・金融政策決定会合において、先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理したものとなります。この内容と合わせて、会議後に公表される「議事要旨」を読むことで、「委員がどのような考えで金融政策決定を行ったのか」、また「今後の金融政策の見通しはどうなのか」などが見えてきます。
また、通常会期ならば6月半ばで終了する通常国会の終盤には「骨太の方針」が閣議決定され、公表されます。
アメリカの金利
世界の金融政策に影響を与えるアメリアの金融政策はFOMCで決定されます。FOMCも日銀金融政策決定会合と同じようなペースで開催されますが、6月は13-14日に開催されます。2023年年初の見通しでは、6月か7月(25-26日)の会合あたりまでは0.25%程度の金利が行われ、以降は横ばい、23年末か24年年初には金利を下げる予測となっています。この予測通りならば、夏から秋ごろにかけて、アメリカ株式市場は厳しい状況がつづくかもしれません。
まとめ
ここまで述べたシナリオならば、金利上昇はあっても僅かな幅に留まると思われます。
そして、不動産市況はまだまだ上昇基調が続くでしょう。
執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所