不動産市況

最新 2020年国勢調査から人口動態を読み解く

最新 2020年国勢調査から人口動態を読み解く

 6月25日、2020年に調査を行った国勢調査の速報値が発表されました。今回は、2020年最新の国勢調査データを分析します(速報値のため、確定値発表で少し変わる可能性があることをどうかお含み置きください)。

国勢調査とは

 国勢調査は1920年(大正9年)に調査が開始された、日本で最も重要とされている統計調査です。先ごろ発表された最新調査は2020年分ということで、調査開始からちょうど100年にあたります。
 国勢調査では、日本人に加えて日本に住む外国人に対して5年に1度、10月1日時点における人口・世帯数、その他として男女の別、出生の年月、就業状態、従業地または通学地、世帯構成、住居の種類、住宅の建て方などを調べる大規模調査です。調査の結果は、行政の政策、各種法令の制定その他様々な事に利用されます。
 今回の速報では、人口や世帯に関する集計結果が公表されましたので、人口・世帯の順で解説します。

人口について

 2020年10月1日時点の日本の人口(外国人含む)は、約1億2622万人で前回調査(2015年)に比べて約86万8000人減少しました。減少幅は、マイナス0.7%で前回の減少幅(2010-2015年)がマイナス0.8%でしたので、それよりもわずかに減少幅が小さくなりました。5年ごとでの人口減少は2回連続ということになります。前回の減少人口がマイナス約96万2000人でしたので人数でも減少幅が少なくなっています。これは外国人居住者が増えていることが要因のようです。人口男女比は、94.6対100で女性の方が5%以上も多いことになります。これは平均寿命の差が大きいものと思います。
 世界との比較をすると、人口では日本は世界11位(前回調査時は10位)で、2010年からの10年間では上位20か国で唯一人口減少国となっています。

都市部に人口は集中

 近年の人口の特徴として大きいのは、大都市部への人口集中です。
東京都の人口は約1406万人(11.1%)、神奈川県924万人、埼玉県734万人、千葉県628万人で、首都圏1都3県で3693.9万人となり全人口の29.3%と3割近くが首都圏に住んでいることになります。1都3県に住む人口は、この5年で約80万人増加しました。なかでも、東京都は2010-15年の増加幅は2.7%でしたが、2015-20の増加幅は4.1%となり、増加幅が大きく伸びました。
 1都3県に福岡県を加えた計5都県で人口増加の幅が大きくなりました。福岡県は九州の中での東京的な位置づけになりつつあるようです。
 また、近年人口増加が目立っていた滋賀県や沖縄県、愛知県では人口増加の幅が小さくなり、勢いに陰りが見えた状況です。一方、首都圏などへの人口流出が目立っていた大阪府では、人口減少から増加へ転じ、人口における関西の地盤沈下が収まりつつあるようです。これら合計9都府県が人口増加、残り38道府県の人口が減少しています。

地方都市の人口減少は進むが、エリア内での明暗も

 地方都市の多く(京都・兵庫・広島などを含む33府県)では人口減少幅が大きくなりました。こうした府県では、その府県の中での人口移動も多く、各エリアの中心地や利便性のよい都市では人口増加になっています。地方都市でのこうした集中地域では、流入者も多いことから、さらに賃貸住宅需要の高まりが起こることが予想されます。

世帯について

 次に世帯についてです。
2020年10月1日時点での日本の世帯数は約5572万世帯、この5年で約227万1000世帯増加しました。増加率はプラス4.2%となっています。
 世帯数は、この100年間一貫して増加しており、前回(2010年―15年)の増加幅は2.9%でしたが、今回の増加幅は4.2%と大きくなりました。これは核家族化がさらに進み、加えて単身世帯がかなり増加していることが要因だと推測されます。1世帯当たりの平均構成数は2.27人となっており、一貫して減少しています。1995年調査で初めて3を下回りましたが、この25年でさらに構成人員が減っている状況が浮き彫りとなっています。
 東京都では1世帯当たり人員は1.95人と史上初めて2を下回り、東京に住む単身世帯の多さがうかがえます。

 都道府県別にみると、世帯数が最も増えたのは沖縄県で次いで東京都となっており、6県以外の41道府県で世帯数は増加しています。

世帯数と賃貸住宅需要

 住宅需要は人口以上に世帯数が大きな要因となります。人口減少が進む日本ですが、施設数は増加しており、また世帯数の増加幅も大きくなりました。また単身世帯の60~75%(地域により異なる)程度は賃貸住宅に暮らしています(今回調査速報版では結果公表がないため前回調査による)。世帯数の増加の大きな要因は単身世帯の増加だと思われますので、こうしたことを合わせて考えると、大都市はもちろん地方都市における利便性の良い場所などにおいても今後も賃貸住宅需要は増えるものと思われます。

 確定版が公表されると、多くの集計結果がでますので、その時に、さらに突っ込んだ分析をしたいと思います。

執筆者一般社団法人 住宅・不動産総合研究所

関連記事